福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
昆 虫 類
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名   称 ニッポンハナダカバチ
学   名 Bembix niponica F.Smith
分 類 1 昆虫類
分 類 2 ハチ目ドロバチモドキ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
あわら市(旧芦原町):吉崎(499),富津(539),和泉村:朝日前坂(63),敦賀市:野坂山(869),松原(833)
選定理由 希少種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  ハナダカバチ(Bembix )属は,世界から約330 種が知られている.殆どすべての種が,アブ,ハエなどの双翅目を狩る.他の狩り蜂より大形の虫を狩るので,他種との競り合いが少なく混棲することができる.日本には,ニッポンハナダカバチが北海道から屋久島まで見られ,南西諸島の石垣島,竹富島にはタイワンハナダカバチが分布している.この仲間は砂漠,海浜,河原の堆積砂丘の乾燥した砂地に多く見られるが,時には塩水や淡水で湿った地中や粘土混じりのかなり堅い地中にも営巣する.日本では乾いた砂地に巣を作ることが多い.最初の獲物を搬入した直後に卵を産み付ける.最初の獲物は卵を安定する土台となる.母バチは卵の孵化まで入口を閉鎖して待つ.ふ化するとすぐに新鮮な獲物を幼虫の成長に応じて給餌する.この時母バチと幼虫との対面が生じる.これは,単独生活からミツバチのような社会生活にいたるまでの中間的な段階で,前家族生活という.ニッポンハナダカバチは,巣の主坑を地表から45 度前後の角度で10 〜60cm 掘り進み,やや上に曲ってその先に楕円形の育房をつくる.まず卵を産付する土台用のアブを狩り,育房の中央に横たえる.卵はアブの胸部側面の羽の基部に直立または斜立して固定される.卵の固定される側の羽はなんと安全のため脱臼されている.このような育房を地上より浅い方から深い方へと最高6 巣を設ける.本種は集団的に営巣することが多く,時には100 〜300 匹のコロニーを作る.外国ではハナダカバチ類は吸血アブを駆除する有用昆虫として畜産業者に知られている.飼育の例もあるという.
保護の現状
 と留意点
 みどりのデータバンク調査の1980 年代頃までは,県内各地の海岸,河川敷,湖畔にこのハチのコロニーがよく見られたが,その後生息地の環境破壊が進み,本種は急激にその数を減少した.公園や墓地等の造成に伴い,土砂と共に運ばれた繭が羽化して,時々偶発的に大発生することがあるが,しかし,それらは環境条件が揃わず間もなく姿が見えなくなっている.今回の調査では,ごく限られた人手の入らない所に局地的に生息しているだけだった.かつては,海浜や河川敷の乾燥した砂地での代表種の1 つとして扱われていた本種である.急激な減少に驚きを禁じ得ない.北潟湖畔に調査に出かけた時,「自然を守ろう.砂の採取をやめよう!」の立て札が目に付いた.このような意識,運動が大きくなることを願いたい.自然を守ることは,生物と環境を共有することであり,この種のような有用昆虫の保護にもつながるものである.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)