福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
昆 虫 類
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名   称 キアシハナダカバチモドキ
学   名 Stizus pulcherrimus (F.Smith)
分 類 1 昆虫類
分 類 2 ハチ目ドロバチモドキ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
三国町:三里浜(736),敦賀市:常宮(863),花城(833)
選定理由 希少種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  中国から記載された種で,モンゴル,朝鮮半島,日本にも分布する.わが国では,本州,四国,九州の海岸や河川下流域に生息するが,各地とも個体数は大変少ない.福井県では,1964 年,敦賀市常宮海岸から初記録された.その後,敦賀市花城,三国町三里浜でも生息が確認され,1970 年代には詳しい生態観察がなされた.三里浜では海岸から100 〜200m 内陸にコロニーが見つかった.防風林として植樹された松林の中の,廃道となった自動車道路の一部を営巣地としていた.8 月,日当たりのよいよく固まった砂の裸地を選んで巣を作っていた.巣は,やや長円形をした25cm 内外の深さの坑道が本坑で,左右に2 〜4 個の側坑があり,その先端に育房がある.ハチが巣を留守にするときは,本坑入口に砂を1cm ほど軽く詰める.寄生バエの進入を防ぐようである.貯食中の坑道は,育房に接続する所で3 〜6cm にわたって緩く砂が詰められ,二重の仮閉鎖を施す.餌は,周りに生息するイナゴ,バッタ類を狩る.狩った最初のバッタに産卵する.バナナ状の4mm ほどの卵は,バッタの翅の付け根に下方は密着し,バッタの腹に向かって立てられる.次々と狩られた獲物は,頭部を奥に横向きに重ねて2 〜3 列に並べられる.重ねるとき次の獲物の頭部は前のものの胸までずらして置かれる.繭は内壁の糸と糸の隙間に砂粒を口からの粘液で付着し,最後に口を使って閉鎖する.雄バチは,雌の営巣地域に4 ヶ所までの着地点を持ち,それを中心に旋回し,接近してくる昆虫に追跡行動をする.同種には特に強い反応をする.
保護の現状
 と留意点
 1960 年代の三里浜や敦賀半島常宮は,海岸より内陸へ入った所に防風林や神社の森があり,人の手でよく管理され,神聖な森としても大切に扱われてきた.当時,三里浜の林床はヒノキゴケなどに覆われて適度の湿り気を持ち,草食昆虫の食草を育てた.林の所々には小さなマツやハマゴウ,ウシノケグサ,カワラケツメイ,ヒメヤブラン,コマツナギが下生えとして混生していた.キアシハナダカバチモドキの他にハナダカバチ,キオビベッコウ,キヌゲハキリバチなどが混棲していた.今の三里浜に1960 年代の面影はなく,常宮神社前はダンプカーが疾走する.一定のゾーンを設けたグリーンベルトは良い案だが,防虫剤,徹底した除草剤,機械刈りなどを導入した管理は避けるべきである.北潟湖畔の,自然の僅かに残る片隅でも本種を目撃した.今後の調査が必要である.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)