福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
昆 虫 類
[先頭ページ] [前のページ] [次のページ]
名   称 チャイロスズメバチ
学   名 Vespa dybowskii Andre
分 類 1 昆虫類
分 類 2 ハチ目スズメバチ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
大野市:小池(56),下打波(谷山)(97),温見(245),池田町:大本(335),若狭町(旧三方町):遊子(986)
選定理由 生態学的に貴重なもの
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  体長は雄が26mm 前後,女王蜂が29mm 前後,働き蜂が18 〜24mm である.頭胸部は主として赤褐色で,腹部は全体が黒褐色である.本種はモンスズメバチやキイロスズメバチの一時的社会寄生者として知られている.冬眠から覚めた女王蜂は,しばしば働き蜂が羽化した寄主の巣に侵入して,その巣の女王蜂だけを殺して産卵を始め,働き蜂にわが子を育てさせる.しばらくは両種の働き蜂が一つの巣に共存するが,やがて寄主の働き蜂は死に絶えて,巣はチャイロスズメバチだけのものになる.北方系の種で,ウスリー,中国大陸に分布する.日本では北海道から東北,中部地方の山地に分布し,特に日本海側からの記録が多いが,各地とも個体数は少ない.福井県は分布の南西限になっている.大野市,池田町の山地のほか三方町の海岸近くからも記録されている.
保護の現状
 と留意点
 本種が採集されている大野市,池田町,三方町では最近急速な道路工事が進み,著しく環境が変わってきている.スズメバチ類は他の昆虫を狩り肉団子を作り幼虫の餌として与えるので,植物を食害する他の昆虫の異常な増加を防ぐ大切な役割を持っている.これらの地域での綿密な調査を進めれば,日本における本種の詳細な生態調査が期待できるので,これ以上の人為的な手入れは止めて,環境の保全を是非図りたいものである.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)