福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
昆 虫 類
[先頭ページ] [前のページ] [次のページ]
名   称 アスワメクラチビゴミムシ
学   名 Trechiama sasajii S.U´eno
分 類 1 昆虫類
分 類 2 コウチュウ目オサムシ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
福井市:足羽山(589)
選定理由 希少種、分布限界種、生態学的に貴重なもの
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  体長約5mm ,メクラチビゴミムシの1 種.透けたアメ色で複眼は退化している.福井県特産種で,福井市足羽山の七尾口坑のみで知られる洞窟性の種である.本種は,同所より上野俊一氏が新種記載したもので,ヨシイメクラチビゴミムシ種群に属する(Ueno,1980 ).メクラチビゴミムシ類は生息密度は高いと思われるが,一般的な採集では得にくい.発生期間は不明であるが,採集されたデータは4 ・6 ・11 月で,通年見られると思われる.ヨシイメクラチビゴミムシ種群は30 種以上になり,いずれも地下性のもので,外観的標徴は互いに極めて類似しており,その識別は♂交尾器と体毛の配置による.本県には同種群として他にツルガメクラチビゴミムシ(敦賀),ヌクミメクラチビゴミムシ(越美山地),ナタンショメクラチビゴミムシ(名田庄村),トウゲノメクラチビゴミムシ(冠山),エツミメクラチビゴミムシ(今庄),イマジョウメクラチビゴミムシ(今庄)が知られており,いずれも非常に狭い地域に固有の種である.なお,七尾口坑はもと,笏谷石の採掘が行われていた廃坑で,現在は閉鎖されている.
保護の現状
 と留意点
 本種は残念ながら原記載以降,確実な再確認はされていない.極度に廃坑の環境が変化しない限り本種は保存されているものと思われる.閉鎖されていることによって外からの影響が侵入せず,環境が維持されているものと望みたいが,いずれ再確認する必要はあろう.メクラチビゴミムシ類は地下生活によく適応しているために,強く地域に結び付いている.したがって生物地理学的及び地質学的に非常に重要である.本県には3 属9 種が知られており,狭い地域に依存している.その土地の特質を受けているため,開発はむろんのこと,土壌汚染だけでも生存を脅かされる.目に見える開発のみだけではなく,目に見えない汚染にも留意しなければならない.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)