福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
昆 虫 類
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名   称 コオイムシ
学   名 Diplonychus japonicus Vuillefroy
分 類 1 昆虫類
分 類 2 カメムシ目コオイムシ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
越前町(旧織田町):桜谷(823),大野市:南六呂師大池(160)
選定理由 希少種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  体長17 〜20mm の水生カメムシ類で,オスが背中に卵を背負い,孵化するまで保護する.本種は,近縁種のオオコオイムシと比べて,淡色で,体が小さくやや細形であること,脚がより長く,前腿節のふくらみが弱いことなどで識別される(宮本,1985 ;岡田,1991 ;苅部・高桑,1994 ).本州から九州に分布し,水生植物が繁茂した浅い池,湿地,休耕田などで記録されているが,オオコオイムシと比べると本種の方が,平野部に多く,水深が深くて水温が高い環境に生息する(伴,1979 ;岡田,1991 ;市川,1996 ;苅部・高桑,1994 ).前回のみどりのデータバンク調査では,武生市において2 箇所の記録があった.しかし,その後の再同定作業において,「原色福井県昆虫図譜」(1938 )に図示され,福井県昆虫目録(1985 )で記載されているコオイムシはオオコオイムシであることが確認された(佐々治,私信).よって,今回の調査事業で記録された織田町桜谷と大野市南六呂師の大池の2 箇所の池は,県内における本種の貴重な生息地であることが確認された(松村,1993 ;福井県自然環境保全調査研究会昆虫部会,1998 ).
保護の現状
 と留意点
 生息が確認された2 箇所の池は,他にも自然特性に挙げられた水生昆虫類が生息するなど,数少ない貴重な止水環境である(松村,1992b ;松村,1993 ).しかし今回の調査で,水質悪化や夏場の干上がりなどが観測され,周辺の開発による環境悪化は著しい.また,オオコオイムシよりも本種の方が希少性が高いのは,本種が人間活動の盛んな平野部を中心に生息していることも一因であろう.県内の2 箇所の生息地は,いずれも丘陵地的な環境で,平野部の生息地がほとんど失われる中で,丘陵地であったが故にかろうじて残った生息地と考えられる.しかし,いずれの生息地とも,人間活動に隣接した位置にあり,いつ生息地が失われても不思議ではない.よって,本種の全国的な希少性のレベルを考慮すると,2 箇所の池の保護対策は早急に講じるべき段階にきている.このような水生昆虫相の豊かな止水環境は,近年急激に減少しており,本種を代表とする水生昆虫相を保全するためにも保護対策が必要である.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)