福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
両 生 類
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名   称 クロサンショウウオ
学   名 Hynobius nigrescens
分 類 1 両生類
分 類 2 サンショウウオ目サンショウウオ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
大野市:池の大沢(136)・刈込池(38)・赤兎山赤池(93),勝山市:法恩寺山(157)・小原峠(92),池田町:水海(337・312・313・338),南越前町(旧今庄町):古池(497)
選定理由 分布限界種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説   クロサンショウウオは体長15p程度の暗褐色をした日本における代表的な止水性サンショウウオで,本州東北地方から中部地方にかけて分布している.福井県でのクロサンショウウオの生息地はこれまで大野市経ヶ岳池の大沢や南条郡今庄町古池等の標高1000m前後の山岳地帯から知られていたにすぎないが,最近,今立郡池田町の標高450m付近で発見されたことは記憶に新しい.
 本県では4月から6月にかけてクロサンショウウオの産卵が開始される.産卵期の雄は頭部が膨らんで頭幅が広い形になる.雌は1対の卵嚢を水面近くの枯れ枝等に産みつけ,雄はこれらの卵嚢に抱きつき受精させる.雄は産卵場所となる止水中で雌を待ち,産卵した雌が去った後も水中にしばらくとどまって次の雌を待つ.
 日本に分布する小型サンショウウオ類は卵嚢の形に特徴があり,種を識別する上で重要な形態形質になっている.典型的なクロサンショウウオの卵嚢はアケビ型をしており,透明な外層と白濁した内層の2層からできているので,一見して他のサンショウウオの卵嚢と区別できる.しかしながら,標高が高い所に生息しているクロサンショウウオの卵嚢は内層が透明で外部から卵を透視できる透明なタイプとなる割合が高くなっている.また,卵嚢に関するもうひとつの特徴は,卵嚢外層を覆っているうすい外皮上に縦線が見られることである.
 福井県は日本におけるクロサンショウウオ分布地の南限として生物地理学的に興味深い位置にあり,今後の精力的な調査が必要とされる.
保護の現状
 と留意点
 本種の生息地は加越国境沿いの標高1000m以上の池や湿地であるため,人間による環境破壊の影響を受けることはない.また,本県池田町の標高450m付近で新たに発見された繁殖地も山間部で人の目につくところではない.従って,現時点では緊急に本種のための保護を講じる必要はないと考えられる.

(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)