福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 熊野神社のツクバネガシ林
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 常緑広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
若狭町(旧上中町):井ノ口 熊野神社(995)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  上中町井ノ口にある熊野神社は,715 年に紀ノ国より勧請され,1646 年小浜藩主酒井忠勝によって社殿が建立されたといわれている.現在,神輿や太鼓などの神事が催され,集落の村社として祭られている.その社殿の東側および背後に続く社叢は,ツクバネガシを中心とし,タブノキ,カゴノキ,モミ,スダジイ,モチノキなどの大木を含む常緑広葉樹林となっている.ツクバネガシでは胸高直径80cm 以上になる大木も見られる.県内でのツクバネガシの分布は比較的希であり,このような大木が見られる林分は,他には報告されていない.また,カゴノキは胸高直径70cm 以上のものもあり,貴重といえる.林床はほぼ平坦で,背後の山からの水が流れており,部分的にかなり湿潤な立地条件にあるといえる.本林分は,東側の一部が伐採されたり,杉等が植栽されるなどの撹乱を受けている.そのため林床の光環境などは場所によってかなり差があり,林内の植相ならびに構造が複雑になっている.林間には,モチノキやヤブニッケイ,シロダモ,サカキ,ユズリハ,スダジイ,ヤブツバキ,ウワミズザクラなど多様な種が生育し,林床にはユキミバナ,シャガ,ミョウガ,ヒメアオキ,ベニシダが優占する他,ジュウモンジシダ,ハイイヌガヤ,サカキ,ミヤマカタバミ,フユイチゴ,ハナイカダ,スミレサイシン,シュロ,ナツエビネ,アケボノシュスランなどが見られる.ユキミバナは,これまでスズムシバナとされていたものが,最近別種として認められたものである.本種は若狭地方を北限とする種で近畿地方北部にのみに分布するとされているが,本地域にはかなりの個体数が生育しており,分布上注目される.
保護の現状
 と留意点
 神社の社叢林として,概ね保護されてきているようだが,過去に落雷に見舞われたり,一部伐採されたりして,様々な要因による撹乱の跡が見られる.また,周囲には林道も通っており,今後も人為的な影響を受け続けるものと思われる.できるだけ人の手を加えず,群落全体の推移を見守っていくことが望まれる.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)