福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 雲谷山のブナ林
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
若狭町(旧三方町):雲谷山(951,952)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  三方町と美浜町の境界にある雲谷山(786.6m )は,北部は花崗岩,南部は中・古生層の地層が分布し,全体的にはやや穏やかな斜面地形の孤立的山塊といえる.近年,伐採,植林が進み,標高が低い山麓部では代償林がほとんどを占めているが,標高650m 付近からはブナ林を主とした夏緑広葉樹林が分布している.林内の階層構造も発達し,夏緑広葉樹林の典型的な相観を呈しているが,天然のアシウスギが混生している林分もわずかながら見られることは注目に値する.林間及び林床にはハウチワカエデ,タムシバ,マルバマンサク,オオカメノキ,リョウブ,エゾユズリハ,クロモジ,ウスギヨウラク,チゴユリ,マルバフユイチゴ,ハイイヌツゲ,ヤマソテツなど日本海要素の種が多く生育し,組成的に比較的均質な林相を呈している.本林分は,植物社会学的にはクロモジ−ブナ群集に位置づけられている.本群集は,中国地方から岐阜県まで分布し,組成的な特徴としては,クロモジ,ヨグソミネバリ,タンナサワフタギなどの太平洋側要素の種群と,チシマザサ−ブナ群団の標徴種群であるチシマザサ,ハウチワカエデ,ヒメモチ,エゾユズリハ,ハイイヌガヤ等の日本海要素の植物が混在することである.嶺南地方では,県境の脊陵山地は比較的低標高のため温暖な環境下にあり,また,古くから薪炭林業を主とする伐採が繰り返されてきたことから,このようなブナ林は少なく,かつ組成が不安定な傾向にある.しかしながら,本林分は比較的安定したブナ林であると同時に,前述のように日本海側から太平洋側への移行的な性格の群集に属することから,注目すべき森林といえる.
保護の現状
 と留意点
 本地域のブナ林も昭和60 年頃までは,かなり上部まで伐採が進んだが,山林の所有者と三方町などの協議により頂上を中心に約25.5haの保全区域が設定されたため,その中心部は安定した状態で推移している.しかし,南側の一部では,周辺の伐採による風等の影響からか,ブナの生育が十分でないところが見られるので留意が必要である.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)