福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
[先頭ページ] [前のページ] [次のページ]
名   称 黒河川流域の植生
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
敦賀市:黒河川流域(838,839,840,841,870,871,872,873)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  黒河川は,敦賀市南方の乗鞍岳(865.8m )と三国山(876.3m )付近を源とし,野坂岳(913.5m )と岩篭山(765.2m )の間を北に流れ,平野部で笙の川と合流して敦賀湾に注いでいる.流域には広く花崗岩が分布しており,露出した岩肌に節理や小断層が見られる.山地から平野部への境にあたる山集落付近では,稲荷神社社叢に代表されるスダジイの巨木が生育する照葉樹林が見られる.沢沿いにはトチノキ林やウラジロガシ林の他,本県では珍しいアカガシ林等が見られ,尾根沿いにはアカマツ林,山麓には夏緑広葉樹林が見られる.標高約150m からブナが川沿いの斜面に現れ,標高約500m 以上では林を形成している.胸高直径50cm 程度のブナもかなり生育し,林間にはオオバクロモジ,ホツツジ,マルバマンサク,コシアブラ,リョウブ,ハウチワカエデ,ベニドウダン,ヒメアオキ,ミヤマシグレ,ウスギヨウラク等,林床にはヤマソテツ,トクワカソウ,ヤブコウジ等が見られる.ブナ林の上部にはブナ−スギ群落が広がり,天然更新しているスギの林相が見られる.乗鞍岳や三国山山頂付近には風衝低木林が広がり,中にはベニドウダンが多く見られる.三国山山腹には小規模な湿原(別掲)があり,キンコウカ,モウセンゴケ,ツルタチツボスミレ,トガクシコゴメグサ等の分布上貴重な種が生育している.また,この湿原は県内では数少ないハッチョウトンボの生息地ともなっている.この地域からは他にハスノハイチゴ,ヒメシャガ,タジマタムラソウ,シロバナウツギ,コバンノキ,カゴノキ,オオバキスミレ等の植物地理学的に貴重な種が報告されている.
保護の現状
 と留意点
 大部分は国有林で,一部は生物遺伝資源保存林に指定され,ブナ,スギ,ミズナラ,イヌシデが保護の対象となっている.林道がかなり奥まで入り込み,伐採と植林が大規模に進んでいるが,貴重な自然が残されるような配慮が望まれる.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)