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名 称 |
日野山のブナ林 | ||
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学 名 |
− | ||
分 類 1 |
植生 | ||
分 類 2 |
冷温帯落葉広葉高木林 | ||
位 置 (2kmメッシュ番号) |
武生市,南越前町(旧南条町):日野山(601) | ||
選定理由 |
自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地 | ||
区 分 |
B(県レベルで重要なもの) | ||
解 説 |
日野山は武生市と南条町の境に位置する南条山地北東端の山である.標高は794.8m で南条山地の中では最も高い.日野山は古くから山岳信仰の霊山として越前五山の一つに数えられてきた.また,武生側から見たその優美なコニーデ型の山容から「越前富士」と称されて,紫式部をはじめ多くの歌人や詩人達によって詠まれてきた.日野山におけるブナ林は,標高700m あたりから現れ,山頂付近ではかなり自然林的な林相が見られる.林冠を形成するブナは,胸高直径40 〜45cm で,比較的若齢の樹からなっている.このブナ林の構成種は,高木層にブナ,ホオノキが混交し,亜高木層にはハウチワカエデ,ヒトツバカエデ,コハウチワカエデなどのカエデ類,オオカメノキ,ブナ,コシアブラなど,低木層にはハウチワカエデ,ヒトツバカエデ,コハウチワカエデ等のカエデ類,オオバクロモジ,リョウブ,オオカメノキ,ウスギヨウラク,タムシバ,ヤマモミジ,ユキグニミツバツツジなど,草本層にはミヤマシグレ,ヒトツバカエデ,オオバクロモジ,マルバマンサク,オオカメノキなどの夏緑広葉樹の他に,ヒメモチ,エゾユズリハ,ハイイヌガヤ,ツルシキミ,ハイイヌツゲなどの常緑樹が混生している.これらの構成種から,本林分は,日本海型ブナ林のヒメアオキ−ブナ群集に属するものと考えられる.日野山は地理的に嶺南地区や岐阜県から続く山塊の端にあたり,植相も嶺南から嶺北への移行型を示すといえる.シモバシラ,オオバアサガラは,この地域を日本海側分布の北限または北東限にしていると考えられ,またアキチョウジ,コバノタツナミやミツバノバイカオウレンの分布も植物地理学的に興味深い. | ||
保護の現状 と留意点 |
日野山は,全体的に地形が急峻であり,また古来から信仰の対象の山として扱われてきたこともあって,特に中腹より上部においては極端な人為的開発の影響はなかった.しかし昭和56 年の豪雪の後,崩壊した山頂の日野神社再興のために資材運搬用林道が造成され,その一部に降雨による表土の崩壊が見られるのは,いささか気がかりである.また,日野山においても,近年ミズナラの枯死が目立ちはじめており,早急に何らかの保全の対策を講ずる必要があるものと思われる.
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(C) 福井県自然保護課 出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行) |