福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 夜叉ヶ池周辺の植生
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林・風衝低木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
南越前町(旧今庄町):夜叉ヶ池(497)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  夜叉ヶ池(標高1200m )は,福井県の三大河川の一つである日野川の源流部にある周囲約200m ,最深約7m の池である.岐阜県境の尾根近くに位置しているため,本池に流入する川はないが,周囲の自然林から流れ込む水によって,年中水を絶やすことはない.池の中には,本池の固有種であり,国内希少野生動植物種にも指定されているヤシャゲンゴロウが生息している.登り口の駐車場脇に立っているカツラの巨木(幹周り6.4m ,樹高32m ,樹齢約400 年,今庄町指定天然記念物)が,まず登山者を迎えてくれる.そこから登山道を1km あまり進むと,急な登りとなる手前にトチノキの巨木が2 本(大きい方のトチノキは幹周り7.4m ,樹高約20m ,樹齢約400 年)立っているのが目を引く.ブナは,登り口付近の標高600m 辺りから見られるが,安定したブナ林は標高900m 辺りから山頂にかけて分布する.ブナ林の林冠には,ブナの他にハウチワカエデなどのカエデ類などが僅かに混生する.林間にはオオバクロモジ,オオカメノキ,シノブカグマ,ツノハシバミなど,林床にはトクワカソウ,ヒメモチ,ヤマソテツなどが高頻度に出現する.わずかながら,ホンシャクナゲが生育している林分も見られる.池周辺の風衝地では,マルバマンサク,ヤハズハンノキ,サワフタギ,ナナカマド,ノリウツギ,クロヅル,ハナヒリノキ,キャラボク,ヤマソテツなどが出現して,多雪地域特有の低木林叢を形成している.また,池周辺から三国岳頂上部にかけては,タテヤマリンドウ,トウキ,コバイケイソウ,ミツバノバイカオウレン,エチゴキジムシロ,ヤハズハンノキ,キタゴヨウ,モミジカラマツ,イブキゼリ等の分布西限や南限となる亜高山性の植物が豊富に見られる.
保護の現状
 と留意点
 歴史的には信仰域として保存されてきたこと,地形が全般的に険しく,特に山頂付近は極めて急峻なため,植生には現在まで余り人工的な手が入らず,良く保存されている.しかしながら,近年登山者が急増しているため,植生への踏みつけ,ゴミ投棄などによる環境への影響が懸念される.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)