福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 久米田神社のシラカシ林
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 常緑広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
丸岡町:下久米田(435)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  本神社は,県道鳴鹿・森田線沿いの標高100m ほどの丘陵南斜面にある.県道際に大きな鳥居があり,そこから60m ほど行ったところから100 段ほどの急な階段となる.階段を登りきると,そこに小さな社殿が建っている.周辺の山がほとんどスギ植林で置き換えられている中で,本神社の回りには暖温帯内陸部の代表的自然植生であるシラカシ林が残存している.階段東側の斜面は幅30m ほどの範囲にシラカシ林が広がり,県道からも一目で照葉樹の林とわかる.特に,まとまった林分は社殿西側に見られる.およそ30m 四方に,樹高約18m ,胸高直径約30 〜50cm のシラカシが生育し,見事な林相を呈している.林冠はシラカシのみで形成され,幹にはテイカカズラ,サネカズラなど木性蔓植物が着生している.林間はシラカシ,ヤブツバキが優占し,他にヒメアオキ,シロダモなどの常緑広葉樹や,コシアブラ,カマツカ,フジ,ムラサキシキブなどの落葉樹が僅かに混生している.林床はヤブコウジ,テイカカズラ,シラカシ,キヅタ,ヒメアオキなどの常緑植物の他に,ベニシダ,ヤブラン,カマツカ,ナツヅタなどの植物も多く生育する.各階層にシラカシが出現することから,本林分はかなり安定したものと考えられる.中部地方のシラカシ林はシラカシ群集としてまとめられており,本県では,本地域の他に鯖江市の神明神社などにも残存林が見られる.本県のヤブツバキクラス域は,かつては海岸近くにスダジイ林やタブ林が分布し,海岸から離れた内陸部の平野・丘陵・低山地にかけては,カシ類を主とした樹林で占められていたと考えられる.しかしながら,永年の産業活動によって,カシ林は破壊され,今日では,ほとんど見ることができない.本林分は,かつて本県の内陸部にかけて広がっていたと思われるシラカシの残存林として貴重である.
保護の現状
 と留意点
 社叢林として現在のところ良く保存されているが,周囲はスギ植林が進んでいるためシラカシ林に植林が及ばないか懸念される.シラカシが純林状で残存していることは,本県では極めて稀で貴重であり,今後とも積極的に保全に努める必要がある.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)