福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 浄法寺山周辺の植生
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
永平寺町:浄法寺山(347,348)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  浄法寺山(標高1052.8m )は,冠岳(838m )および丈競山(1045m )とともに加越山地西側山塊の一角をなし,その山腹は比較的急な斜面となっている.近年,冠岳中腹の清水小場まで林道が開通し,清水小場一帯は浄法寺山青少年旅行村として整備され,なかなかの賑わいを見せている.浄法寺山,冠岳および丈競山を含む地域は,冬季の季節風の影響を受ける多雪地である.この一帯には,夏緑広葉樹の自然林や二次林が広がる森林生態系が構成されている.標高400 〜500m (部分によってはそれ以上)まではスギの植林が進められているが,その上部ではコナラ林,アカマツ林,ミズナラ林,ブナ林などが見られる.ブナ林は,浄法寺山山頂付近の標高950m 前後に広く分布しており,胸高直径15 〜20cm ,高さ10m 前後の若齢樹が林冠を優占し,林間にはオオカメノキ,マルバマンサクなど,林床にはエゾユズリハ,オオバクロモジ,ヒメモチ,トクワカソウなどが優占している.日本海要素の種が多く見られ,チシマザサ−ブナ群団の林相を呈している.特記すべきものとして,浄法寺山の標高850m 付近の北斜面にナツツバキ林が分布しており,これだけまとまった群落は,この地以外には報告されていない.この林分は,胸高直径20cm ほどのナツツバキの高木が林立して林冠を形成し,林間にはナナカマド,オオバクロモジ,マルバマンサクなど,林床にはオオバクロモジ,ヒメモチ,ハイイヌガヤなどが優占している.ナツツバキの生態を知る上で貴重な林分と考えられる.浄法寺山北側に位置する丈競山では,標高200m 付近にこの地域の固有種であるエチゼンダイモンジソウが分布している.また,西限種としてタマアジサイが分布しており,本地域は植物地理学的に興味深い要素を持っている.
保護の現状
 と留意点
 浄法寺山,冠岳および丈競山を含むこの地域では,かなりの広範囲にわたって伐採,造林が進んでスギの植林地が広がっており,それに伴う林道の整備も拡大している.特に龍ケ鼻ダムから石川県にぬける林道周辺一帯の伐採は著しい.本地域は地形的に不安定であることも認識し,保護対策が積極的に講じられることが望まれる.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)