福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 部子山の植生
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林、風衝低木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
池田町:部子山(312,313)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  部子山(標高1,464m )は,池田町と大野市の境の南北に伸びる標高1000 〜1400m のなだらかな山地の中ほどに位置する.池田町水海から林道を通ると,山頂のすぐ下まで車で行くことができる.山頂付近の平坦部の一部には馬場があり,現在は「能楽の里牧場」となっている.この牧場は,チシマザサ草原とその周辺のブナ林を伐採して造られたものである.ブナ林は標高約800m 以上から尾根までの斜面に見られ,尾根付近(1100 〜1400m )はチシマザサ草原となっている.ブナ林の林冠を形成しているのは,胸高直径40cm までぐらいの比較的若い樹で,ミズナラが混交する.林間にはオオバクロモジ,オオカメノキ,エゾユズリハ,ユキグニミツバツツジ,ハウチワカエデ,コハウチワカエデ,林床にはオクモミジハグマ,ヒメモチ,ハイイヌツゲ,オオバクロモジなどが生育する.その中でも,林間にユキグニミツバツツジが優占的に見られる点は珍しく,本県においては貴重なものである.山の上部へ行くと,風の影響を受けて低木化したブナが広範囲に分布している.尾根では樹高の低いブナ林となり,山頂付近ではダケカンバやナナカマドと風衝低木林を形成している.尾根付近に分布するチシマザサ草原には,ヒメモチ,ハイイヌガヤ,アラゲアオダモ,ミヤマイボタなどがチシマザサに混じって生育する.さらに,山頂付近には,シモツケソウ,クガイソウ,シオガマギク,エチゴキジムシロの優占する亜高山性の草原がある.また,山頂の西約500m のところ(標高約1400m )には,「千本杉」と呼ばれる約0.3ha の天然スギの林分がある.このスギには枝が匍匐して,ところどころで幹を直立させるというアシウスギの特徴がよく表れている.尾根の凹地にあることから,積雪による湿潤な環境の影響を受けていると考えられる.
保護の現状
 と留意点
 林道に沿って,植林が進んでいる.また,大野市側の植林も進んでいて,今後もこの傾向は続くものと予測される.このブナ林はもとより,チシマザサ草原と併せた風衝低木林や亜高山草原,スギ天然林は,福井県でもすぐれた山岳植生の景観を呈して,貴重である.残された自然を積極的に保護する必要がある.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)