福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 平家平の植生
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
大野市:巣原 平家平(268,269)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  平家平は,雲川の支流巣原川の上流域に位置し,標高約700m から1200m にかけて広がる緩斜面である.ここには今から約670 年前,平家の落武者が隠匿して住んだという伝説が残り,名前のいわれともなっている.平家平の196ha の森林は,大野市が1996 年購入して保全管理している林で,この中には県下でも特筆に値する大トチノキ(幹周り7m20cm ,樹高約26m )が生育している.平家平上部にはブナ林が広がっている.ここでは自然林に近い林分から,二次林,林下がオウレン畑として管理されている林など様々な林相のブナ林が見られる.林下のオウレンは,愛知県の資産家故古川為三郎氏によって長年栽培されてきたもので,現在も広範囲にわたって生育している.南東部の鞍部や谷間周辺は,ブナ,ナンゴクミネカエデ,マルバマンサクなどの低木が優占する湿地となっており,その中央部や谷川沿いには,多数のミズバショウが群生している.春先の雪どけ後には,真白い花を咲かせ登山者の目を楽しませてくれる.県内では,取立山(別掲),林谷,大芝山(別掲)などにミズバショウの生育地が見られるが,平家平の群生地は個体数および生育面積において他をしのいでいる.また,日本のミズバショウ分布地の中では兵庫県氷ノ山に次いで南に位置しており,注目に値する.平家平に自生する植物で特筆すべきものとして,ミズバショウのほかテバコワラビ,キバナイカリソウ,エチゴツルキジムシロ,ヒダボタン,ヒメヒダボタン,ヒロハユキザサなどがあげられる.中でもテバコワラビは県内での分布地が少なく,本地域の他には能郷白山,銀杏峰,部子山で確認されているだけである.
保護の現状
 と留意点
 平家平の大半は,大野市の市有林として保全されている.県や市町村が自然度の高い地域を購入することは,保護を図っていく取り組みの例として,また,これからの自然保護の進め方を検討していく上で重要な例であると考える.気懸かりな点は,最近,登山者が増加しているため,心ない人により山菜や稀少植物が乱獲されることである.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)