福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 北谷町のミチノクフクジュソウ群生地
学   名
分 類 1 植生
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
勝山市:北谷町(155)
選定理由 学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  北谷町は,勝山市から谷峠を通って石川県に抜ける国道157 号線沿いにある山間地である.ミチノクフクジュソウは,同地区の出作り地である標高500m 前後の田畑の畦畔部やスギの伐採跡地などに生育している.フクジュソウの仲間は,北海道〜九州まで広く分布し,これまではフクジュソウ1 種とされていたが,最近になってフクジュソウ,キタミフクジュソウ,ミチノクフクジュソウの3 種に分けられた.ミチノクフクジュソウは,花弁が萼片より明らかに長いなどの特徴を持ち,本州と九州に分布している.福井県では,本地域にのみ自生が確認されているが,かなり以前から知られていたらしく,昭和8 年に行幸記念として発刊された「福井県生物目録」にも記載されている.本種の群生地は何カ所か見られるが,勝山市はその一つを天然記念物に指定して保護に努めている.指定地は標高540m 地点の西斜面にある棚田で,現在耕作は行われていないが,三段になった畦の傾斜地に多くの株が生育している.生育密度の高いところでは1 u当たり15 〜20 個体もあり,花期には見事な景観となる.行幸記念大野郡植物誌(福井県大野郡教員会編1934 )に掲載されている昭和8 年4 月の採集記に「東側田の畔の一方高く崖をなせる所長さ十間,幅二間づつ三ケ所上中下三段に平行して一面密集せる福寿草あり」とある.この場所は,本指定地と同一と思われるが,「一面密集」といえるのは,現在は上部の一段だけで,他所は点在する程度である.さらに同採集記は,当時の感想を「遠山の残雪白きと相映じて,其の美云はん方なく仙境に入るの感あり」と述懐している.本種は典型的な春植物で,春先の陽光を利用して生育し,周囲の樹木や背の高い草本が葉を茂らせるころには活動を終えるという独特の生活史を持っている.北谷地区の人々による農耕活動が,結果的に本種にとっての好適な環境を維持してきたものと考えられる.
保護の現状
 と留意点
 近年,新聞等でその存在が知れわたったことも影響してか,天然記念物指定地以外では根こそぎの採集が増加している.その上,スギ植林の進行,耕作の放棄,雑木の成長等で本種の生育環境は年々減少している.今後,本地域の個体群が存続するためには,多数の自生地ができるだけ大きな面積で残されることが重要と思われる.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)