福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 中ノ水谷の植生
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林・温帯針葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
大野市:中ノ水谷(129,130,150,151)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  中ノ水谷は,大野市上秋生の笹生川上流域にあり,屏風山(1354.2m )を源流とする急峻な地形の谷である.一帯は東ノ水沢,中ノ水沢,西ノ水沢という三つの水系から成り,笹生川ダムに注いでいる.標高1000m 位までは,いずれの水系もV 字峡谷をなし,いたるところに岩稜や絶壁の地形が形成され,今だに人を寄せつけない.また,山頂近くには大小の滝が連続しており,中には落差100m 近くの滝も見られる.雨量が多く,豊かな水量を誇り,昭和30 年代までは,県下屈指のイワナの生息地であった.この地域は岐阜県との県境にあって,分布上貴重な植物も多く生育している.また,植物相も豊かで,太平洋側要素もかなり出現して注目される.貴重な林としては峡谷のブナ林,狭い稜線に見られるヒノキ林やキタゴヨウ林がある.中でも,ブナ林は林床にホンシャクナゲが高被度で出現し,他では見られない林相となっている.中ノ水谷の自然が生み出した特異な林であろう.このブナ林は,全体的には日本海側要素の強い林であるが,マルバノキ,シロモジなど太平洋側の要素も多く出現する.ヒノキ林は面積としては狭いが,今も原生の姿を残し,中には胸高直径1.5m 以上に達する巨木も生育している.急峻な地形に生じた土地的極相としてのヒノキ林であろう.その林床には,ツツジ科の植物が多く,中でもサラサドウダン,ホツツジ,トウゴクミツバツツジは高被度で出現する.この地域を特徴づける植物としては,ホンシャクナゲの大群落の他,ツルツゲの群生,カキラン,キンコウカ等の湿地性植物,ヒメシャガ,シソバタツナミ,シロバナフウリンツツジ等の稀産種,マンサク,マルバノキ,ツヤナシイノデ,キヨスミヒメワラビ,ヒメコケシノブ等の太平洋側の植物があげられる.
保護の現状
 と留意点
 これまで渓流釣りや一部の登山家が入山しているのみで,県民にはほとんど知られていない.このため流域全体に原生の姿が,今だに多く残されている.近年,県道から蝿帽子川へ行く橋のところより西ノ水沢に向けて林道が開設され,奥地のブナ帯へと道路工事が進められているが,適切な保全が望まれる.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)