福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 刈込池周辺の植生
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
大野市:上小池(38)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  刈込池は,打波川の源流,標高1075m にある周囲約410m ,深さ約5m の池である.この池の周辺は幅ケ平と呼ばれる台地となっていて,よく発達したブナ林に被われている.ブナ林は,1970 年代には鳩ヶ湯付近にまで広がっていたが,伐採が進み,現在ではここだけに残っている.池の水位は夏季にもあまり変動がなく,周囲のブナ林の保水力の高さを物語っている.ブナ林の高木層は,植被率が90%以上で,ほとんどブナが占め,カツラ,イタヤカエデ,サワグルミなどが混生する.高木層を構成するブナは,胸高直径が50cm 以上,樹高約20mの大木が揃い,樹上には県内稀産種であるナガオノキシノブ,スギランなどの着生植物も見られる.林間は,オオバクロモジ,オオカメノキ,チシマザサなどの被度が高い.林床には,ヒメアオキ,ハイイヌツゲ,ハイイヌガヤ,ヒメモチなどの常緑低木の他,オシダ,ヤマソテツ,シノブカグマ,シラネワラビなどのシダ植物が多く生育している.刈込池周辺のブナ林は,かつて上打波一帯に広がっていたブナ林の原形を留める林として貴重である.幅ヶ平の谷沿いには,ブナ林に隣接してサワグルミ林が分布している.特に東部谷沿いに見られる林分の規模は県内有数の大きさである.湿潤な林床にはムカゴイラクサ,リョウメンシダ,ウワバミソウ,ジュウモンジシダなど好湿地性の草本植物が多数混生している.この林は植物社会学的には,日本海型気候下の山地帯に分布するジュウモンジシダ−サワグルミ群集に属すると考えられる.
保護の現状
 と留意点
 本地域は白山国立公園第1 種特別地域内にあり,また,1979 年には福井県が買いあげ,保護管理下に置いている.近年,上小池までの林道や駐車場が整備され,訪れる人が多くなったことから,林内への立ち入り,山菜や貴重植物の乱獲等で荒らされることのないように留意する必要がある.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)