福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 徳平山のシラカンバ林
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
和泉村:徳平山(9)
選定理由 学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  和泉村東市布から徳平山に向けて林道を約1 時間ほど登ると,林道両側にシラカンバ林が見られる.シラカンバは内陸性の冷涼寡雨気候下のブナクラス域に生育し,日本海側ではあまり見られない.福井県におけるシラカンバは,石徹白川流域の朝日前坂北斜面や小谷堂付近に分布しているが,スキー場の開設などにより,大きな木は少なくなった.現在,県内でシラカンバの林として確認されているのは,徳平山の標高800m 付近の東斜面から,北東斜面にかけてである.このシラカンバ林は,学術上貴重な林で日本のシラカンバの分布上,西限に位置している.シラカンバ林の周辺には,谷沿いにオニグルミ,サワグルミの林,斜面にはミズナラの林が広く分布し,1000m 近くからはブナ林になっている.シラカンバは緩斜面に生育していて,樹高20m ,胸高直径は大きいもので30cm ほどである.また,林道周辺の草地や道路沿いには,高さ1m 余りの若木や芽生えが多数生育しているのが見られる.若木が生育していることは注目すべきで,近い将来シラカンバ林として成立することが期待される.シラカンバの生育密度は,他の樹林と比べて低いため,林間や林床の植物がよく成長し,その種数も多い.調査地におけるシラカンバの林間には,シロモジ,エゴノキ,ヤマモミジなどの被度が高く,その他ウワミズザクラ,コシアブラ,コハウチワカエデなどが多く生育している.林床には,ハイイヌツゲ,チシマザサ,シロモジ,シシガシラ,ヒメアオキなどが優占している.これらの中にはギンリョウソウモドキが見られ,ツヤナシイノデ,コバノフユイチゴも確認された.谷沿いには,コタニワタリの群生も見られる.
保護の現状
 と留意点
 和泉村徳平山のシラカンバ林は,分布上西限に位置し,学術的にも貴重である.また,周辺には若木がかなり生育していることも他の生育地では見られない現象で注目すべきである.徳平山には以前開発計画の話もあったが,現在まで手が加えられておらず,林道も荒れた状態である.今後は,人手が入りシラカンバ林の自然植生が破壊されないよう配慮する必要がある.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)