福井県は中部山岳地帯、特に白山山系の西の端にありますが標高2,000メートルを越すような高地はありません。また、対馬海流の北上やリマン海流の南下する日本海に面し、さらに冬には季節風の影響で多量の積雪があります。このためヒメアオキやエゾユズリハなどの、いわゆる日本海地域要素と呼ばれる植物を多く含んでいます。白山山系からは北方系の植物が入ってきていますが、逆に南からは暖流とともに暖地性の植物が入ってきて、特に小浜湾の蒼島などではナタオレノキやムサシアブミなどが注目されます。また、比較的低い県境山脈を越して、太平洋地域要素とも考えられるマルバノキなどをいくらか見ることができます。面積が小さく、標高差も少ないので固有種は非常に少ないのですが、嶺北地方と嶺南地方とではかなり顕著な分布境界がみられ、植物分布上興味ある地域となっています。
植生の面から見ると、日本海沿岸の島や社叢ではイノデータブ群集やヤブコウジースダジイ群集を主とする照葉樹林が認められ、低山帯はクロマツ林に続いてアカマツ林やコナラ、クリなどの二次林となっています。しかし、近年は植林が進み、その大部分はスギ林となっています。
奥越の山岳地帯は、日本海型のブナ林であるオオバクロモジーブナ群集に代表され、紅葉の美しい夏緑樹林となっています。そしてそれより高いところではダケカンバ等が生育していますが、明確な亜高山帯は見られません。また、山頂部にはお花畑がありますが、風衝による草原でその規模は大きくありません。