Ciconia (福井県自然保護センター研究報告) データベース

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表 題 福井県における野生鳥類・哺乳類の救護状況 −1990〜1995年度−
著者名 大迫義人
掲載巻 Ciconia Vol.6
発表年 1997
分 類 その他
要 約  1990〜1995年度の,福井県における野生鳥類・哺乳類の救護状況について整理した.6年間で,福井県獣医師会では,鳥類の17目32科90種802個体,哺乳類の4目7科8種57個体を,福井県自然保護センターでは,鳥類の14目28科54種233個体,哺乳類の5目11科15種47個体を取り扱っていた.合計して,鳥類の計17目34科104種1,035個体,哺乳類の計5目11科15種104個体であった.獣医師会では,鳥類ではドバト,哺乳類ではタヌキ,センターでは,それぞれツバメ,タヌキが多かった.獣医師会では,年平均143±34(SD)件,41±6(SD)種,143±35(SD)個体が,センターでは,年平均38±12(SD)件,21±5(SD)種,47±17(SD)個体が救護された.件数,種数,個体数ともに徐々に増加していた.
 救護された場所は,獣医師会では32市町村,センターでは26市町村で,ともに福井市が最も多かった.多く救護された時期は,ともに5〜8月の,多くの鳥類の営巣期や哺乳類の出産期に多かった.
 野生復帰率は,獣医師会で,鳥類の46.3%,哺乳類の38.6%であり,センターでは,それぞれ40.3%,21.3%であった.最も復帰率の高かった種は,獣医師会ではマガモであり,センターではトビであった.逆に,最も低かった種は,それぞれカモシカ,キジであった.多かった傷病の原因は.獣医師会では「事故」,「衰弱」などであり,センターでは「落巣」,「事故」などであった.本県での取り扱い種・個体数および野生復帰率は,他府県での実績と同様であったが,いくつか問題点を改善すれば,復帰率を向上させることがでさるであろう.また,傷病の原因を究明するには,病理学的解剖や検査も必要である.そして,救護の記録は,野生動物の保護・管理を行なう上でも貴重な資料となり得る.自然保護の本来の目的のためには,動物の生態,社会および行動を変えるような救護は避けるべきであり,有害駆除の対象となっている種の救護については再考が必要である.

Copyright (C) 福井県自然保護センター
出典「Ciconia(福井県自然保護センター研究報告)」(福井県自然保護センター発行)