Ciconia (福井県自然保護センター研究報告) データベース

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表 題 福井県におけるツキノワグマの行動圏と環境利用T
著者名 大迫義人
掲載巻 Ciconia Vol.4
発表年 1995
分 類 哺乳類
要 約  1994年,福井県におけるツキノワグマの行動圏とその利用環境を明らかにするために,ラジオテレメトリー法による調査を行なった.成獣オス3頭,成獣メス1頭と亜成獣オス1頭の計5頭が捕獲され,首輪式発信器を装着して放野された.そのうち,亜成獣を除く計4頭が追跡され,連日記録された場合,1夜あたりの移動距離は,性差はなく平均1,83±456(SD)mであった.また,2頭の行動範囲が飽和し,成獣オスで3,332ha,成獣メスで1,964haの行動圏を持っていた.行動圏または行動範囲は,成獣のオスーメス間で大きく重複していたが,それらの行動範囲と隣接して他の個体の生息が確認されており,福井県において本種は,性に関係なく特定の個体とは共存し,別の個体とは排他的に分散する空間構造を持っていると考えられる.定位測定点の分布は一様でなく,集中するコア・エリアの存在が確認された.行動圏の植生は,ブナーミズナラ群落,コナラ群落などの自然林とスギ植林,アカマツ群落などの人工林であった.そのうち,スギ植林は面積比で20〜67%を占め,かつ定位測定点は有意に谷部に集中していたが,そこでの本種の利用行動がわからない限り生物学的意味付けはでさない.福井県における本種の生態や生息密度を明らかにするにはまだ例数が少なく,さらに調査が必要である.

Copyright (C) 福井県自然保護センター
出典「Ciconia(福井県自然保護センター研究報告)」(福井県自然保護センター発行)