Ciconia (福井県自然保護センター研究報告) データベース

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表 題 福井県におけるカワウの繁殖初記録
著者名 松村俊幸・小嶋明男
掲載巻 Ciconia Vol.4
発表年 1995
分 類 鳥類
要 約  カワウ Phalacrocorax carbo は,ペリカン目ウ科に属する全長約82cmの大型の海鳥で,留鳥または漂鳥として,本州と九州の限られた場所に分布し,海岸や湖沼に近い内陸の林で営巣し,近くの湖沼,河口,内湾などで餌をあさる(高野1981).また,本種はかつて本州各地で繁殖したが(清棲1978),1979年には,青森県(赤岩,市柳沼),東京都(不忍池),愛知県(鵜の山),三重県(飯満),大分県(沖黒島)等,全国で5〜6カ所の繁殖地がみられるだけとなった(日本野鳥の会1994).その後,本種の個体数は増加し,現在の総個体数は2万羽前後と推定され,繁殖が確認されている主なコロニーは15カ所である(石田1993).
 北陸地方の本種の繁殖は,新潟県において昭和の初めころまで,柏崎市,岩船郡,北蒲原地方で確認されていたが,その後は1962年3月に柏崎市岬町で1回記録されているのみである(新潟県野生鳥獣生態研究会 1982).現在は,阿賀野川の中州に4月にも50羽を超える群れがとどまっているのが観察され,今後の動向が注目されている(本間 1994).石川県と富山県では,おもに秋〜冬に渡来し,繁殖はまだ確認されていない(富山県野鳥保護の会 1989,石川県自然保護課 1993).福井県では,ウミウ Phalacrocorax filamentosus に比べ少ないが,おもに秋〜冬に渡来する.繁殖の有無は明らかでないが,1976年5月には鯖江市氏家町のサギのコロニー内において数羽が観察されたことがある(福井県自然保護課 1982).現在は,全国的な増加傾向と同様に,1986年頃から秋〜冬に九頭竜川中流にまで群れが飛来するなど,県内の河川でよく見られる野鳥になった(松村未発表).これまでの1群の最大個体数は,1994年11月7日に九頭竜川の永平寺町鳴鹿、下浄法寺で観察された288+羽である(松村1994).
 このようなカワウの近年の増加傾向の中,福井県でカワウの繁殖を初めて確認したので報告する.

Copyright (C) 福井県自然保護センター
出典「Ciconia(福井県自然保護センター研究報告)」(福井県自然保護センター発行)