要 約 |
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観察されたワシタカ類は2科15種で,チョウゲンボウ,オジロワシ,コチョウゲンボウ,ハヤプサが多く観察され,ケアシノスリ,サシバ,ハイタカ,ハチクマ,アカアシチョウゲンボウは少なかった.ハイイロチュウヒ,コチョウゲンボウ,アカアシチョウゲンボウは,当調査地の記録が福井県の初記録となった.
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出現時期は,秋型,秋冬型,秋〜春型,冬型の4つの型に分類された.種ごとの出現時期の違いは,一次的に繁殖地との距離や主な越冬地との位置関係に影響され,二次的に餌条件と捕食可能環境,種内・種間の関係によって決定されると考えられる.
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多くのワシタカ類が観察された環境は,池または水路と自然草原で,人工草原,林,海浜植物群落でも安定して観察された.ミサゴ,オジロワシ,オオタカ,ノスリ,ケアシノスリ・チュウヒ・ハイイロチョウヒ・ハヤブサ,コチョウゲンボウ,チョウゲンボウにおいて,種ごとの環境選訳が観察された.
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G地区の池が水路に改変された1983年度以前と1984年度以後の出現頻度は,オオタカ
とチュウヒにおいて有意な減少が,コチョウゲンボウとチョウゲンボウにおいて有意な増加が観察された.ネズミ類を主食とする5種の年度別の出現頼度は,1983年度または1984年度にピークの見られた種が多かったが,チュウヒは年度が進むにつれて減少傾向にあった.チュウヒの減少は,改変によるヨシ原環境の消失が主な原因と考えられる.
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当調査地が人工的に造成された環境であるにもかかわらず,食物連鎖の頂点に位置するワシタカ類が多く観察されたことは,今後の人間と自然の共存を考える上で重要な示唆を与えてくれるであろう.
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