Ciconia (福井県自然保護センター研究報告) データベース

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表 題 三方五湖の菅湖におけるカモ類の生息・渡来状況−1989年〜1991年の調査結果より−
著者名 小嶋明男・大迫義人
掲載巻 Ciconia Vol.1
発表年 1992
分 類 鳥類
要 約
  1. 福井県三方五湖の一つである菅湖で,1989年9月中旬〜1990年5月下旬までと1990年8月上旬〜1991年5月下旬までの計139日間にわたって,生息・渡来するカモ類の種と個体数を調査した.
  2. 観察されたカモ類は6属19種で,そのうちマガモが最も優占し(82.9%),以下コガモ,スズガモ,キンクロハジロ,オシドリ,カルガモでこれら6種で97.9%を占めた.
  3. カモ類の渡来は,10月上旬〜11月中・下旬までの約1カ月半に集中し,その後2,000〜3,000羽台で増減を繰り返し,渡去は3月上旬〜4月上旬までの約1カ月問に集中した.
  4. マガモとコガモは11月〜翌2月に多く観察された.スズガモも同時期に多かったが,3月にも多く観察された.キンクロハジロは10月〜翌3月まで見られ,特に3月下旬に多く観察された.オシドリは9月〜12月に多く観察され真冬には個体数が減少した.カルガモは周年観察されたが8月〜10月に多かった.
  5. 湖の面積から期待されるカモ類の種数および個体数に対するここ5年間の平均観察値は,菅湖において最も大きかった.
  6. 菅湖は湖岸のほとんどを樹林地,樹園地で囲まれており,特に樹林地の割合では三方五湖の他の湖よりも高かった.そのために,オシドリが多く観察された.
  7. 菅湖は周囲を小高い山で朗まれていたため,風の強い日にカモ類が多く観察される傾向があった.
  8. 観光船が頻繁に航行する三方五湖の他の湖に比べて,それのない菅湖ではカモ類の生息密度が高かった.
  9. 菅湖におけるマガモ,コガモ,ヒドリガモ,カルガモのどの2種間でも,他種の個体数が渡来数を左右する関係はみられなかった.しかし,ここ10年間でみるとマガモが増えた代わりにカルガモが減少していた.
  10. 菅湖はカモ類全体にとって休息避難場所として機能していると考えられる.マガモ,コガモ,スズガモ,キンクロハジロにとっては越冬地および波りの中継地であり,オシドリ,カルガモにとっては夏期または秋期の集合地であると考えられる.

Copyright (C) 福井県自然保護センター
出典「Ciconia(福井県自然保護センター研究報告)」(福井県自然保護センター発行)