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概  説 (淡水産貝類)

 福井県の淡水貝類は,汽水域,亜種を含め,4目17科40種が記録されている.この中から,種の特性と生息確認地点数,種の生息地の河川や海岸の護岸工事,道路建設,水田整備事業の進捗状況等の地域性を考慮して,県域絶滅は3種,県域絶滅危惧T類は3 種,県域絶滅危惧U類は5 種,県域準絶滅危惧は3種,県域要注目は1種を選定した.

 県域絶滅種6種のうち,カワシンジュガイは,1970年頃の河川改修により生息地の河川環境が大きく改変され絶滅している.カワネジガイは県内2 カ所で生息が確認されていたが,1972 年の武生市の農業用水池の改修後は生息が確認されていない.ヒダリマキモノアラガイは,福井県での採集記録は,唯一,坂井郡木部産の一個体のみである.過去の生息河川内や堤内地の湿地等の再調査から,護岸工事,圃場整備事業等による生息地改変状況から生息しないもとの考えられる.

 県域絶滅危惧T類のカラスガイも,三方湖に生息していたが,第二次の「福井県のみどりのデータバンク」調査時にも確認されていない.100 %に近い護岸工事の進行,アオコ等の異常発生等水質が汚染されて,生息環境が保全されているとは考えにくい状況である.また,琵琶湖固有種のササノハガイの三方湖産標本, 江や三方湖産のトンガリササノハガイ標本が,福井市自然史博物館に残されているが,1985 年時の調査時やそれ以降も生息が確認されていない.ササノハガイは移入された種と考えられる.

 県域絶滅危惧U類のカワグチツボは,久々子湖の一部分しか生息していない.フクイマメシジミは2 カ所の沼地等と生息地が限定され,細々と生きながらえているのみである.生息地の環境変化ですぐにも上位の絶滅危惧にランクされる.マツカサガイやカタハガイも九頭竜川本流域や一部の小河川に生息する種である.近年の河川改修,上流域の大型工事による水質汚濁が,激減の最大の要因である.

 準絶滅危惧としたモノアラガイは,第一次の調査時より激減した種である.清流に生息する種としての指標であり,生息地の減少は県内河川の汚染が進行している証拠となろう.マルタニシは県内の水田のパイプライン化圃場整備が進み,早場米産地として,お盆過ぎからの乾田化のために急激に減少している.また,嶺南の河川に多くの分布域をもっていたイシマキガイも減少している.

 要注目種は,唯一,福井県を模式産地とするフネドブガイである.このフネドブガイは,三方湖で確認された種(黒田,1933 )であるが,文献のみで,過去の調査でも確認されていない.フネドブガイは,今後の精査が必要であるので,要注目とした.

 なお,現在のところ減少傾向にはないが,ホタルの幼虫の餌となるカワニナ類,タナゴ類の産卵母貝となるイシガイ,ドブガイ類は,県内の池沼に生息している.しかし,最近の河川改修や護岸工事は大がかりであり,淡水貝類生息地の環境変化も深刻である.さらに,市街化の進行と共に,用水路や河川に,雑排水が多量に流入し,水質汚濁がひどくなり,貝類の繁殖できる水環境が減少している.生態系の一部を担う貝類の保全を図る必要がある.

(長谷川巌)
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