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概  説 (爬虫類)

 日本における爬虫類は,現在のところ亜種を含めてカメ目4科14種,トカゲ目10科70種,本州ではカメ目4科10種,トカゲ目6科16種が知られている.本県では,カメ目4科8種,トカゲ目6科13種が知られている.本州産爬虫類のほとんどが福井県に生息しており,確認されていない種は,京都府および滋賀県に生息するミナミイシガメと,四国・瀬戸内海周辺に生息するタワヤモリ,日本海に少ないヒメウミガメ,回遊するウミヘビのエラブウミヘビ,マダラウミヘビの5種だけである.

 爬虫類の過去の調査記録は,各市町村史で部分的に調査されたものしかない.しかし,両生類同様,福井県内を網羅した第一次,第二次の「福井県みどりのデータバンク」調査は,生息域の縮小・拡大等の変遷を調査したものであり,ある程度精度の高いものである.

 その結果,県域絶滅危惧T類は1種,県域絶滅危惧U類は3種,要注目4種を選定した.福井県のウミガメ類では,対馬暖流に乗って回遊し,冬季に低温で行動が鈍り,岸に漂着して死ぬものや定置網にかかる個体が多い.

 アオウミガメは,4例の成体が確認されているが,春から夏に回遊してくる傾向が見られる.タイマイは,10例確認されているが,甲長30cm前後の幼体が多く,秋から冬にかけて,死後漂着する例が多い.オサガメは,採集確認記録が13例報告されているが,秋から冬に回遊が見られる.冬に死後漂着する例もある.アカウミガメは,唯一日本の本土で産卵するウミガメであり,西南日本は世界的にも重要な産卵地の一つである.県内では11例の成体等が確認されている.石川県では3例の産卵記録があり,1例が孵化し日本海側の産卵北限として記録がある.福井県では,1967年に小浜海岸での産卵記録が残っているが,詳細は不明である(徳本洋,1984).ヒメウミガメも回遊して来ていると考えられるが,確認記録はない.しかし,ウミガメそのものが世界的に絶滅傾向にあることから,タイマイを県域絶滅危惧T類,アオウミガメ,アカウミガメ,オサガメを県域絶滅危惧U類と選定した.ウミガメ類側から見ると,近年の福井県内の海岸は,消波ブロックや護岸堤構築,砂浜への人や車の乗り入れ等の上陸阻害要因により,ウミガメが上陸して産卵できる砂地が激減している危機的な状況となっている.

 陸水生のカメ類では,クサガメが,第一次「福井県みどりのデータバンク」調査の日野川下流域の4地点から,10年後の第二次「福井県みどりのデータバンク」調査で,日野川下流域から浅水川中流域まで生息地が拡大してきていることが判明した.また,アメリカ南部が原産地のミシシッピアカミミガメがペットショップでミドリガメとして大量に販売され,飼育に飽きて放棄された個体が野生化し,日野川下流域や九頭竜川下流域から北潟湖,日野川中流域,浅水川中流域まで分布を広げている.

 逆に,県内の河川の中・上流域や山麓帯の用水池,池・沼に普通に見られた里山の象徴であったイシガメは,その生息域が狭められている.スッポンは,県内の河川の中流域に生息し,時折,甲長40cm級の個体が九頭竜川や日野川中流域で捕獲されている.しかし,河川の護岸工事,河川堤内地の公園化による自然堤防河川の減少が進み,スッポンの確認生息地点や個体捕獲記録が急激に減少している.このことから県域要注目種と選定した.

 トカゲ目のヤモリは,県内平野部の市街地の民家が生息場所であり,今庄町,美山町に生息域が拡大してきている.トカゲとカナヘビは,県内一円に,やや乾燥した平地の山麓帯から低山地に広く分布している.トカゲは,やや減少傾向にあるが日当たりの良い場所に,カナヘビは,草地に普通に見られる.

 陸生ヘビ類では,もともと生態系の上位に位置し,個体数が少ない.平野部から低山地にアオダイショウ,シマヘビが,山地にヤマカガシ,ジムグリ,マムシが県内一円に分布し,比較的普通に見られる.タカチホヘビは,県内一円に分布し,海抜3mの大飯町長井地区から低山地まで,県内局所的にやや乾燥ぎみの所で生息が確認されている.また,地中に生息しミミズを捕食し,生息環境を強く選択するらしく,亜熱帯性植物が生い茂る小浜市の蒼島でも確認されている.トカゲや小型のヘビ等の爬虫類を捕食するシロマダラは,夜行性で確認されることは少なく,県内一円で生息していたが,第二次「福井県みどりのデータバンク」調査では,平野部の河川堤防や山麓帯では見られず,土壌生物採集の折,時たま確認される山地に限られてきている.ヒバカリは,平地から山地の森林,水田,河川のアシ原等,幅広い環境に生息するが,カエル,オタマジャクシ,小魚やミミズを捕食するため,河川や水辺の環境変化の影響を強く受ける.生息確認地及び確認個体数の経年変化から,タカチホヘビ,シロマダラ,ヒバカリを要注目と選定している.

 ウミヘビ類は,最も海洋生活に適応し,外洋性となっているセグロウミヘビや,琉球列島や台湾に生息しているクロガシラウミヘビもしばしば定置網にかかって捕獲される.ウミヘビは全て有毒なので,漁師には恐れられている.

(長谷川巌)
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