| 概 説 （哺乳類） |
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本県の陸生哺乳類相については「福井の鳥とけものたち」（福井県自然環境保全調査研究会鳥獣部会1998 ）にまとめられている．その後の調査により，アズマモグラ，ヒメヒミズが新たに加わり，記載漏れのあったヒナコウモリを追加すると，飼育個体の一時的な籠抜けを除き，本県では，計７ 目19 科48 種の陸生哺乳類の分布・生息が記録されている．そのうち，記録が明確でなく，確認の必要な３ 種（イイズナ，ヤチネズミ，ウサギコウモリ）および，導入種，帰化種などの外来種９ 種（ドブネズミ，クマネズミ，ハツカネズミ，ヌートリア，アライグマ，ノイヌ，チョウセンイタチ，ハクビシン，ノネコ）を除くと７ 目15 科36 種となる．さらに過去50 年間（1952 〜2002 年）に記録のない２ 種（ニホンオオカミ，ニホンカワウソ）を除くと計７ 目15 科34 種となる．現在，外来種を除いて生息が確認されている種の分類群ごとの内訳は，モグラ目６ 種，コウモリ目７ 種，サル目１ 種，ウサギ目１ 種，ネズミ目９ 種，ネコ目７ 種，ウシ目３ 種となる．これらの多くは，大陸に分布する種の日本産亜種であるが，ヒメヒミズ，ヒミズ，ヤマネは日本固有属，アズマモグラ，ニホンザル，ニホンリス，ホンドモモンガ，スミスネズミ，ハタネズミ，アカネズミ，ヒメネズミ，ニホンイタチ，ニホンカモシカは日本固有種である．
白山山系で生息が確認されているオコジョは，本県が日本の西限となっている種である．また，ニホンカモシカも，本州の連続した分布の中では，本県がほぼ西限となっている．その他，カグヤコウモリ，ヤマコウモリ，コテングコウモリ等も本州の連続した分布の中で隣県の石川県が西限であり，本県でも記録される可能性はある．逆に，ホンシュウジカでは，隣県の石川県では生息記録はあるものの繁殖の確認はなく，チョウセンイタチは，九州から分布を広げてきた結果，本県がほぼ日本海側の現在の東限となっている．コウベモグラ，イノシシも日本海側では，石川県が東限となっている．
本県の哺乳類相において，嶺北地方と嶺南地方とで，分布・生息する哺乳類で顕著に異なる種が見られる．すなわち，嶺南地方で多いニホンザル，ホンシュウジカ，イノシシは嶺北地方では少ない．しかし，1995 年頃より大野市や和泉村では，ニホンザルやイノシシの群れがよく観察されるようになってきている．
本県の奥越地方から石川県と岐阜県にまたがる白山山系の山岳地帯に生息する小型哺乳類（コウモリ類やモグラ類，ネズミ類）の調査が不十分である．福井県では未確認であるが，石川県または岐阜県で生息が確認されている種として，コウモリ目（ヒメホオヒゲコウモリ，カグヤコウモリ，ヤマコウモリ，コテングコウモリ），モグラ目（ミズラモグラ，トガリネズミ，アズミトガリネズミ），ネズミ目（ヤチネズミ）があげられ，今後の調査が待たれる．
選定種の基準
絶滅のおそれのある哺乳類について，種の選定およびランク付けを行う場合，各種の生息現状の客観的評価を行なうために，過去から現在までの個体数と分布域を継続的にとらえていく必要がある．しかし，本県の哺乳類においては，個体数はもとより，分布域における情報さえ不足している．このような現状の中，今回の選定においては，以下の基準で選定した．すなわち，環境省のレッドリスト「哺乳類」のうち，福井県で生息しているか，または，生息していたことが確認されている種として，ニホンオオカミ，ニホンカワウソ，ヒナコウモリ，ヤマネ，オコジョ，テングコウモリを，環境省レッドリストの指定からは外れるが，本県において，特に稀少だと判断される種として，カワネズミ，モモジロコウモリ，ユビナガコウモリ，ホンドモモンガを選定した．このうち，カワネズミおよびモモジロコウモリは，情報が不足しているうえ，生息環境の改変によっては，絶滅に至るおそれが予想されると判断されるため，警鐘を鳴らす意味で選定した．このほかにも，アズマモグラ，ヒメヒミズが，情報不足として判断困難な種としてあげられるが，両種ともに隣接する石川県の白山山系の個体群と連続しており，石川県では今のところ絶滅のおそれがないと判断されていることや，本県でも生息域の大きな改変が考えられないことを考慮し今回は，選定外とした．
また，アズミトガリネズミ，ミズラモグラ，ヒメホオヒゲコウモリ，カグヤコウモリ，ヤマコウモリ，ウサギコウモリ，コテングコウモリは，本県での確実な生息情報はないが，石川県あるいは岐阜県では確認されており，連続した生息分布の中で，本県でも今後調査を行うことにより，生息が確認される可能性は十分にあり，この場合，選定種としてリストアップされることになる．
以上の選定基準を鑑み，今回の選定種は，暫定的なものであり，今後において見直しが不可欠であることを強調しておきたい．