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●種の特性
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平地の浮葉植物や沈水植物などの繁茂する池沼に生息する南方系種で,海岸部に近い開けた水域を好む傾向がある.成虫は5 〜10 月にかけて連続的に見られ,夏期に出現する個体はやや小型である.
セスジイトトンボと誤同定の起きやすい種類であるため,雄では尾部付属器,雌では前胸後縁の形状で確実に同定する必要がある.
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●生息状況
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国内では宮城県以南の本州,四国,九州,琉球列島などに分布する.内陸部では少なく,日本海側では富山県が東限となっている.
県内では芦原町,三国町,福井市,敦賀市,美浜町の海岸部に近い限られた水域で記録されているに過ぎず,同様に沿岸部を中心に記録されているアオモンイトトンボに比べて生息地が更に限定される傾向がある.ただし,本種は海岸部や河口付近に一時的に生じた水域で突然見られるようになることもあり,温暖化の進行とともに県内の分布が今後拡大する可能性もある.
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●存続を脅かす要因
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本種の生息地は平野部の不安定な水域であることが多いため,常に埋め立て,改修,水質悪化の危険に曝されている.嶺南地方のある養魚用溜池では,一時極めて多産したが,水面に繁茂するヒシの除去に伴い激減したという例もある.
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●参考文献
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福井県自然環境保全調査研究会編.1999 .福井県のすぐれた自然 動物編.452pp .福井県.
和田茂樹.2001 .福井県におけるトンボ類の生息地の現状.Ciconia .(9):37- 42 .福井県自然保護センター.
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