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●種の特性
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体長約2cm で,クロベッコウ属の中では大型のほうである.全身真っ黒で翅の曇りも強い.脚(特に前脚で顕著)の肘節の下面が偏平で両側に短い毛が生えている.水辺に住み,獲物のハシリグモを水面を滑走しながら運ぶことが知られている.肘節下面の偏平は水面で浮力を得るための適応であろう.
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●生息状況
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九州(福岡,鹿児島県),本州の中部以西(埼玉,福井,大阪,兵庫,広島県)に分布するが,各地とも個体数の少ない珍しい種である.本県では,敦賀市中池見で記録され,クモをくわえて水面を滑走することが,2回にわたって観察されている.種名は確認できなかったが,大野市笹生川ダムでも,水上を滑走してクモを運ぶベッコウバチが観察されており,他の池沼の水辺にも本種が生息することが予測される.
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●存続を脅かす要因
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本種は水辺の朽ち木や土の中に巣を作るので,池沼環境が改変されると生息できなくなる.現存する湿地,池沼の生息環境改変は本種の存続を脅かすこととなる.
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●参考文献
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羽田義任.1992 .水面を滑走して獲物を運ぶベッコウバチ.福井虫報,(11 ):50 .福井昆虫研究会.
岩田久二雄.1978 .蛋民生活者アケボノベッコウ.昆虫を見つめて五十年(U),27- 37 .朝日新聞社. 長田勝.1994 .水面を滑走してクモを運ぶハチ.福井虫報,(14 ):16 .福井昆虫研究会. Yasumatsu,K .1936 .¨Uber einige neue oder seltene Mordwespen aus Japan .Mushi .(9):23- 29 . 福岡むしの会.
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