-
●種の特性
-
体長約15mm 前後.ややきゃしゃなイメージの中型ゲンゴロウ.頭部と前胸は黄褐色で,それぞれ黒帯がある.東日本に分布するメススジゲンゴロウに極似し,雄はほとんど区別出来ない.雌は鞘翅に毛の生えた溝を欠く.1963 年にメススジゲンゴロウの亜種として記載され,後に独立種に昇格した.
生態については詳しい報告が出ている.成虫は降雪直前まで活動しており,初夏には岸辺の浅瀬で休む個体が多い.夜叉ヶ池には魚はおらず,恐らく本種は食物連鎖の頂点に立っていると思われる.
-
●生息状況
-
ごく近縁のメススジゲンゴロウは北海道から富山・石川の県境までの高地に分布しているが,白山山塊や大野市刈込池では確認されていない.本種はこの種の世界の分布圏末端に位置し,種分化から見ても興味深い.
今庄町夜叉ヶ池の固有種で,近くの湿地や池にも生息していない.
-
●存続を脅かす要因
-
この世界唯一の集団を育む夜叉ヶ池は僅か面積36a という,山頂近くの極めて閉鎖された状態であり,僅かな変化で食物連鎖は崩れる恐れがある.本種は,「絶滅の恐れのある種の保存法」によって捕獲や損傷が禁止されているが,マニア等による密猟の恐れがある.
-
●参考文献
-
福井県.1999 .福井県のすぐれた自然 動物編.452pp .福井県.
奥野宏・窪田寛・中島麻紀・佐々治寛之.1996 .ヤシャゲンゴロウの生活史.福井昆虫研究会特別出版物. (1 ).53pp .
|