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●種の特性
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湧水池とその流水路にすむ.水温15 ℃前後の水の澄んだ砂泥底で,水草のある所を好む.生涯を淡水中で過ごす陸封型で,小型の底生動物や浮遊動物を食う.産卵期は5 〜10 月,砂泥底のくぼみに雄が水草や繊維を集めて巣を作り,そこへ雌が産卵する.雄がなわばりをもち巣や仔稚魚を保護する.
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●生息状況
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北海道大沼,青森県,福島県会津田島,栃木県那須,福井県大野市の湧水に分布し,福島県以降の三県では天然記念物に指定されている.
本県は陸封型イトヨの南限地に当たり,1934年5月1日に大野の本願清水(湧水池)が生息地として国の指定を受けた.ここは保護を受け,今もいくらか生息している.
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●存続を脅かす要因
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扇頂で地下への伏流水が減少し,一方,湧水汲上げ量が増加するなどで,地下水位が次第に低下し,本願清水の湧水涸れが起こるようになった.また開発でイトヨがすむ多くの湧水池が埋め立てられ,その生息環境が極度に悪化し,分布域と生息数が激減した.
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●参考文献
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福井県.1998 .福井県の陸水生物.203pp .福井県.
宮地伝三郎・川那部浩哉・水野信彦.1976 .原色日本淡水魚類検索図鑑.462pp .保育社,大阪. 大野市教育委員会.1973 .大野盆地における陸封型イトヨの生態.48pp . 大野市教育委員会.1998 .天然記念物本願清水イトヨの生息地緊急調査報告書.33pp .
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