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●種の特性
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急峻な断崖のある山地に周年生息し,全長81 〜89cm ,翼開長170 〜213cm に達する国内最大級の大型タカ類で,成熟した落葉広葉樹林,雪崩跡の草地,林縁部や林内のギャップ,伐採地などで,ノウサギ,ヤマドリ,ヘビ類などを捕食する.
本県では,12 〜1 月に巣造りを開始し,1 月末から3 月中旬に産卵,雛は3 月上旬から4 月下旬に孵化し,5月中旬から7月上旬に巣立つ.
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●生息状況
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北半球の山岳地帯や半乾燥の高原地帯に広く分布し,日本には,北海道,本州,四国,九州に分布するが,本州の東北地方から中国地方の日本海側が主な生息地である.本県には周年生息し,12 〜20 羽が嶺北地方の山岳地帯と嶺南地方の一部に生息し,その行動圏は100km2を越えると推定される.
本県における1991 〜2000 年の期間の繁殖成功率は28 %で,急激な低下が報告されている全国的なイヌワシの繁殖成功率とほぼ同率であり,巣立ちに成功する雛数は,本県全域で1 年あたり1 羽前後に過ぎない.
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●存続を脅かす要因
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繁殖成功率の急激な低下の要因として,主に餌条件の悪化による繁殖行動の中止,人間活動の拡大による営巣・生息環境の悪化などが挙げられる.
行動圏内には,落葉広葉樹林,草地,伐採地などの狩猟が可能な多様な環境が適度に分布することが必要であるが,近年の大規模開発による環境の多様性の低下が本種の存続を脅かす.
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●参考文献
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福井県自然保護センター.1995 .希少猛禽類(イヌワシ)保護管理調査報告書.22pp .福井県自然保護センター.
福井県自然保護センター.2001 .希少野生生物種の保存事業(イヌワシ保護対策)調査報告書.54pp .福井県自然保護センター. 福井県.1999 .福井県のすぐれた自然 動物編.452pp .福井県. 環境庁自然保護局野生生物課.1996 .猛禽類保護の進め方−特にイヌワシ,クマタカ,オオタカについて−.106pp .財団法人 日本鳥類保護連盟,東京. 松村俊幸・久保上宗次郎.1996 .福井県におけるイヌワシの1990 年以前の生息および繁殖状況. Ciconia(福井県自然保護センター研究報告)5:47- 54 . 高野伸二.1990 .フィールドガイド 日本の野鳥.342pp .財団法人 日本野鳥の会,東京. 中村登流・中村雅彦.1995 .原色日本野鳥生態図鑑〈陸鳥編〉.301pp .保育社,大阪. 日本鳥類目録編集委員会(編集).2000 .日本鳥類目録改訂第6 版.345pp .日本鳥学会,帯広.
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