マミジロ(オスの成鳥) | メボソムシクイ(性別不明、幼鳥) | ムギマキ(オスの成鳥) |
鳥類の標識調査は世界的な規模で行なわれており、現在日本では年間約19万羽(平成8年)の鳥類が標識放鳥されています。福井県でも環境庁の施設である織田山鳥類観測ステーション(丹生郡織田町笈松)を中心に、毎年約3000羽が標識放鳥されています。 標識調査の方法としては、かすみ網等を使って捕獲した鳥類の右足に、届け先・国名・個体識別用の番号(例えば日本では "KANKYOCHO JAPAN 2A-12345"のようなもの)が刻印された金属リングを装着します。その後、鳥類の種・性別・年齢などを同定したり、体重や翼・尾の長さなどを可能な限り計測したりして記録に残し、放鳥します。 こうして放鳥された鳥が、国内または国外のどこかで再び回収されることによって、その個体がどういった経路を通ってどれくらいの距離を移動したか、つまり渡りの経路がわかるようになります。また、どれくらいの期間生きているかも知ることができますし、計測値や写真を残していれば外部形態がどう変化したのかも知ることができ、識別のための知見が蓄積されることになります。 ところで、この標識調査は世間一般での認知度も低く、人目につきやすい場所で調査をしようものならまちがいなく怪訝(けげん)な顔で見られます。なぜなら、特に小鳥類を捕獲する場合、かすみ網を使用しているからです。かすみ網に掛かった鳥は、当然網の中でもがくので、種類によってはグルグルに絡まります。これを一般の方が見ると、単に残酷なことをしているかのように誤解されるわけです。 以前こんなことがありました。標識調査中に鳥を回収するために、かすみ網の見回りをしていたときのことです。見知らぬ人が網に絡まった鳥をはずそうとしていました。慌てて「調査で捕獲していますのでさわらないでください」と話しかけたところ、その人は「可哀想じゃないか」と怒り出しました。そこで、「時間を決めて見回っているので大丈夫です」「(未経験者が)触ると余計に絡まりますよ」と説明しようとしましたが、私たちの説明には全く取り合ってもらうことができず、「いくら調査でもひどすぎる」「本当は食ってんじゃないのか」といった言葉を残して、憤慨した様子でその場を去っていかれました。「食べているのではないか」という言葉には、私自身かなり腹が立ちました。でも、調査のことを何も知らない人が、網に掛かった鳥を見て怒るのは当然かもしれません。かすみ網を使っての調査は一見残酷のように見えますが、この調査を行なうことによって鳥類の移動経路や寿命、識別点などが解明されていく重要な調査なのです。 実際、かすみ網を使っての標識調査は誰でも実施できるわけではありません。私たち標識調査員(正式には「山階鳥類研究所標識調査協力調査員」)は、 |
調査を実施するための訓練を十分に行なった後、"山階鳥類研究所"主催の講習会を受け認定されています。つまり、こうした資格を持った者のみが調査を実施できるのです。技術的に未熟な人がかすみ網から鳥をはずそうとすると、かえって鳥を苦しめることにもなりかねません。標識調査中のかすみ網にかかった鳥を見かけた場合、くれぐれも触ろうとしないでいただきたいのです。
|