84(青葉火山地)青葉山地区−−−−5万分の1地形図【丹後由良】【鋸崎】−
                          【舞鶴】【小浜】
〔概 要〕〔地形・地質〕〔植 物〕〔鳥 獣〕〔昆 虫〕〔爬虫類等〕〔景 観〕

84 青葉山地区                                      [⇒位置図]

〔概 要〕
 青葉山(669m)は山体が著しく開析されており、その時代は新第三紀末(鮮
新世)と推定される。四周の丘陵地末端部には、多くの地すべり地形が分布して
いる。
 植相では、山頂付近に固有種オオキンレイカが分布するほか、ヒモカズラ、
アオベンケイソウなど、本県において植物区系地理学的に極めて重要な種が多く
分布している。また、山頂付近には、ブナ−オオバクロモジ−ツルシキミ群落が
優占する典型的な日本海型ブナ林が分布している。
 鳥獣類では、ヒヨドリ、ホオジロ、ウグイスが優占しているが、カラ類、
オオルリ、キビタキ、ワシタカ類も認められ、大型獣類の生息もあり、良好な生
息環境である。
 また、昆虫相は、暖地性昆虫が多く、種類によってはその分布北限あるいはそ
れに準ずる分布地となっており、これに山地性昆虫が加わって、特異な種構成が
みられるなど、学術上貴重な地区である。両生類、爬虫類では一般的なものが多
く、貝類ではコベソマイマイ、シリオレトノサマギセルが確認されている。
 青葉山は、コニーデ型火山の独立峰で広い裾野丘陵をもち、高浜海岸から眺め
る山容は、若狭富士と呼ばれて秀麗な景観を見せ、また山頂からは、若狭湾の雄
大なパノラマ景観が楽しめる。


〔地形・地質〕
 青葉山は、その特異な山容から、若狭富士の名がある。山腹傾斜の急な山体が
丘陵地から突出し、これを侵食した小河川が放射状に分布する。山体は開析が著
しく進んでおり、その地質からみて新第三紀末(鮮新世)に活動したものであろ
う。
 青葉山安山岩類は、主として安山岩質の凝灰角礫岩の厚層からなり、一部に熔
岩を伴っている。裾野の丘陵地では深部まで風化が進んでいることが多い。その
基盤は内浦層群(中新世)、中・古生層および流紋岩類から構成され、難波江層
群(三畳紀)が海岸部にあらわれ、三畳紀後期を示す貝化石を多産することで有
名である。なお、丘陵末端部には多くの地すべり地があり、鎌倉、神野両地すべ
り地が代表的といえる。


〔植 物〕
 青葉山は、福井県大飯郡と京都府舞鶴市との境界のやや福井県側に位置する孤
立山塊で山頂付近の安山岩の露頭のかげに、固有種であるオオキンレイカが分布
すること、また山頂を中心に、ヒモカズラ、アオベンケイソウ、イワデンダ、
イブキジャコウソウ、クマガイソウなど、福井県における植相の中で、区系地理
学的に貴重な種類が多く分布している。
 標高250m付近までの山麓には、下部には、ヤブコウジ−スダジイ群集組成の
照葉樹林が分布しており、その上部では、ヒノキ植林及びモウソウチク林が見ら
れ、250m付近から標高450mまでには、クマシデ林、アカシデ林、イヌシデ林や
、クリ−コナラ林、クリ−ミズナラ林及びムクノキ林などの代償林が分布してい
る。標高450m付近からブナが分布し、520m付近から山頂にかけて、組成的に安
定したブナ林が分布している。
 山頂付近のブナ林では、林冠にブナ、イタヤカエデ、ハウチワカエデ、林間に
はオオバクロモジ、サイゴクミツバツツジ、マルバマンサク、タムシバ、
ウスギョウラク、アカミノイヌツゲ、ハイイヌガヤ、ヒメモチ、林床には
ツルシキミ、ヒメカンスゲ、チゴユリ、アツミカンアオイやミスミなどが優占し
、全体的に、ブナ−オオバクロモジ−ツルシキミ群落にまとめられ、日本海型の
ブナ林型を呈するものとされる。


〔鳥 獣〕
 全体としてはヒヨドリ、ホオジロ、ウグイスが優占するがシジュウカラ、
ヤマガラ、エナガ、イカル、カケス、コゲラも次いで多い。夏鳥のオオルリ、
キビタキの繁殖も見られ、ツミ、ノスリ、クマタカ、ハチクマ、サシバの
ワシタカ科5種を認める。夏鳥では18種が通過あるいは繁殖し、山麓では放鳥の
コジュケイが鳴き、キジの生息環境としてもよい。スギ若令林、二次林も見られ
るが、ブナ原生林やモミ、夏緑広葉樹、スギ、ヒノキの成木林が多数の鳥種を養
っている良好な生息環境といえる。
 ニホンカモシカ、ニホンイノシシ、ニホンツキノワグマの大型獣が生息する。


〔昆 虫〕
 年々森林伐採と集落周辺の開発が進み、自然環境は低下の傾向にあるが、昆虫
の種組成も個体数も極めて豊富で、生物地理学上貴重な昆虫も数多く記録されて
おり、嶺南地方における第一級の昆虫の豊庫といえよう。蝶類では
ウラナミジャノメの生息が認められるほかは、全県レベルで特記すべき種は分布
しないが、全般的に豊富で比較的少ないジャコウアゲハ、オナガアゲハ、
アサキマダラ、アオバセセリ、ツマグロキチョウ、ムラサキシジミ、
アサマイチモンジ、オオムラサキ、スミナガシ、ツマグロヒョウモンなどがそれ
ほど稀でなく見られ、64種の生息が確認されている。トンボ類ではネキトンボ(
北限分布)、クロスジギンヤンマ、タカネトンボ、ハッチョウトンボ、
エゾトンボなどの生息が注目される。甲虫類ではスネケブカヒロコバネカミキリ
、オオキボシハナノミ、ワモンオビハナノミなどは分布北限であるし、
ケブトハナカミキリ、ヤノトラカミキリも最近音海で発見されて北限記録が更新
されたが、それまでは青葉山が北限であった。暖地性甲虫として
ヨコヤマヒメカミキリ、フタオビミドリトラカミキリ、
ムネアカナカボソタマムシ、ミツボシホソナガクチキムシ、ミツギリゾウムシ、
ナガフトヒゲナガゾウムシ、イチモンジハムシ、サシゲチビタマムシ、
アミダテントウ、フナガタクチキムシ、キイロクチキムシ、
シワナガゴミムシダマシ、ハネナシナガゴミムシダマシなど多数が分布する。そ
のほか、ヒゲナガヒメルリカミキリ、ハスオビヒゲナガカミキリ、
トラフホソバネカミキリ、ホソツツタマムシ、マスダクロホシタマムシ、
チャバネムクゲテントウダマシ、フタモンヒメコキノコムシ、
ムツモンナガクチキムシ、オトヒメテントウ、オオナガニジゴミムシダマシ、
ツマグロツツカッコウムシ、ヒメボタル、ヒメオサムシなど県下では記録例の少
ない甲虫が分布する。暖地性のクマゼミも定着生息しているようで、その声をよ
く聞く。蜂類では、アカアシツチスガリは県下唯一の記録であるし、珍種である
フクイアナバチも記録され、ミカドジガバチは個体数が少なくない。そのほか、
ミドリセイボウの生息も認められる。暖地性のオオゴキブリは各所の樹皮下に見
られる。そのほか、オオキンカメムシ、ヒメクロカメムシ、ウシカメムシ、オオ
クモヘリカメムシ、ヤスマツナガカメムシ、キカマキリモドキなどが注目すべき
昆虫としてあげられる。
 隣接する音海半島と共通して暖地性昆虫が多く、いくつかの種においてその分
布北限、あるいはそれに準ずる分布地となっており、それに山地性昆虫が加わっ
た昆虫相を示し、植生をはじめとする自然環境の豊かさと相まって特異な種構成
が見られ、学術上貴重な地区である。


〔爬虫類等〕
 両生類、爬虫類では一般的なものが多い。カエルでは、ダルマガエルおよび
ヌマガエルの生息記録(若狭湾沿岸地域における動物調査報告書1976、若狭地域
動物研究会)があるほかは、ヒキガエル、トノサマガエル、ツチガエル、
ヤマアカガエル等であり、爬虫類についてもシマヘビ、アオダイショウ、
ヤマカガシ、マムシ等一般的なものである。
 貝類では、ウスベニキセル、アツブタガイ特にコベソマイマイ、
シリオレトノサマギセルの生息は数少ないが特記する価値がある。


〔景 観〕
 青葉山は、コニーデ型に近い山容の火山で、山麓に高野、松尾、中山、神野、
白井などの集落が点在するかなり広い裾野丘陵をもち、急峻に高くそびえるその
山容は、若狭の名山に恥じない秀麗さをもっている。
 中でも日引より内浦湾の水を隔てて望む山容と、高浜の若宮海岸から汀と松林
を近景に望むもの、及び関屋、梅ヶ谷付近より仰ぐ山容とは、それぞれ趣を異に
するもので、みる場所によって異なった美しさをもつ山である。
 また山頂からは、眼下に内浦湾が展開し、東は小浜湾、敦賀半島、西には舞鶴
から丹後半島など若狭湾の雄大なパノラマ景観が俯瞰される。
 青葉山の北側斜面を例に、この山の林相景観をみるに、山麓の海岸沿いには
ヤブコウジ、スダジイ林の群落やアカマツ林がみられ、それより登るにしたがい
スギ林(植林のものが多い)、クリ−コナラ林、クリ−ミズナラ林と変り、山頂
付近ではブナの原生林も分布するなど、自然度の高い貴重な森林景観を示してい
る。
 この山の東麓にある中山寺は、真言宗の古刹で鎌倉時代の本堂をはじめ、周囲
の景観によく調和した伽藍がよく整っている。この境内からは、季節によって異
なった若狭の美しい自然景観が眺望できる。
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(この地区の情報は BEATLES さんに入力を協力していただきました)