77(若丹山地)名田庄東部地区−−−−−5万分の1地形図【小浜】【熊川】−

〔概 要〕〔地形・地質〕〔植 物〕〔鳥 獣〕〔昆 虫〕〔爬虫類等〕〔陸水生物〕〔景 観〕

77 名田庄東部地区                                   [⇒位置図]

〔概 要〕
 三国岳(775.9m)を主峰とする県境脊梁及び久田川の上流域を含む地区で、
この付近一帯は壮年期の若丹山地に属しており、複雑な褶曲構造を示す中・古生
層が広く発達している。植相は、日本海地域固有要素が豊富に入っているブナ−
ミズナラ林が分布している。
 鳥獣類では、ヒヨドリが群を抜いて優占し、カラ類も見られる。また大型獣類
も生息しているが、スギの植林地が多くその生息環境は普遍的である。
 昆虫相は、開発がかなり進行し、全般的には単調であるが、部分的には相当豊
富であり、優れた自然度を保持していると推定される所もある。
 またオオサンショウウオが生息していたという記録がある。
 この地区には、三国岳を水源とする流域で、南川支流の久田川、虫谷川がある
が、水質は良好で水生昆虫類の現存量が多いほか、ムギツクの分布が注目される
。


〔地形・地質〕
 名田庄村久坂付近から、東南方にかけて分布する中・古生層中には、三畳系が
かなり含まれているらしい。主として細化成層と葉理の発達した頁岩の互層から
なり、砂岩は黒雲母質でマトリックスが多い。久坂付近では、しばしばスランプ
礫岩層がみられ、層状チャートを挟んでいる。当時の古流向を示すソールマーク
が多い特徴がみられる。スランプ礫岩(礫質頁岩)は砂岩、チャートの礫が多く
含まれ、この地区の地層は複雑な褶曲構造をもち、十分その層序が判明していな
い。


〔植 物〕
 三国岳を主峰とする県境脊梁及び久田川の上流域を含む地区で、標高300mぐ
らいから山頂までの範囲である。
 全体的に山頂及び尾根沿いは、組成的にオオバクロモジ−ブナ群集に共通する
ブナ−ミズナラ林が優占するが、一部には、標徴種及び日本海地域固有要素が豊
かなオオバクロモジ−ブナ群集が分布して、嶺南における代表的な夏緑広葉樹林
環境が構成される。


〔鳥 獣〕
 6月虫谷川沿いの調査で29種を記録した。ヒヨドリが202個体と群を抜き、
ヤマガラがこれに次ぐ。ウグイス、シジュウカラ、カワラヒワの他渓流の
カワガラス、渓流沿いのキセキレイも見られた。またクマタカのほか獣類では、
ニホンカモシカ、ニホンイノシシ、ニホンツキノワグマおよびニホンザルが生息
する。


〔昆 虫〕
 虫谷川・木谷川に沿って京都府県境へ到るかなり複雑な地形を呈し、標高は高
くないが、谷は割合深く、そのために昆虫相は豊富で自然度を高く評価できる所
が部分的に残されている。しかし、地区全体からみると、伐採が著しく進行して
いる部分が多い。甲虫類は川沿いの道路わきに多く、大型種には恵まれないが、
枯木などにつく小形種は種類も個体数も多く、虫谷から記録された
ヨツモンホソナガクチキは全国でも6例の報告しかない珍稀種で、しかも分布北
限を示すものである。ツツキノコムシ類やミジンムシ類の種が多く、中には県下
で当地区だけというものが数種ある。永谷ではアミダテントウの生息が確認され
た。蜂類は道路わきの花や集落内の人家付近に多くの種が見られ、
コシジロギングチバチ、ヘロスギングチバチ、ニトベギングチバチ、
アイヌギングチバチ、キスジセアカカギバラバチなど県下では従来奥越山地にし
か分布していないと思われていたものの生息が判明するなど、優れた自然が保た
れていることが推定される。また、杉尾峠に近い森林ではエゾハルゼミの生息が
確認されたことは特筆すべきである。
 当地区の中では、虫谷川上流域が特に良い自然度を保持していると思われるの
で、保全に努めるべきである。


〔爬虫類等〕
 両生類のオオサンショウウオ科のオオサンショウウオが南川上流域の染谷川地
区に生息していたという記録がある。


〔陸水生物〕
 (藻類)
 この地区の三国岳を水源として久田川、永谷川、虫谷川などがこの地区を流れ
、南川に合流している。久田川水系で木谷、挙原の2ヶ所で付着藻を調べた。2
地点合わせて藍藻4、珪藻51、緑藻2、計57種を確認した。クチビルケイソウ属
が木谷地点で優占していたほかは特に多い種類はなく、メロシラ属、
アクナンテス属、フナガタケイソウ属、ヒビミドロ属などが優占種についで多い
。
 (水生昆虫類)
 南川支流の久田川流域、河川形態はBb型、勾配はゆるやかで、礫の安定度は良
い。造網型トビケラの生息する割合が多くなり、現存量も多い。種類数も豊富で
、水生昆虫の生息環境は良好である。
 (魚類)
 ウグイ、タカハヤ、カワムツが生息していた。イワナは生息しない。


〔景 観〕
 南川支流の久田川、永谷川、虫谷川、仁吾谷の水源地域に近い谷地形には、
スギの植林がかなりすすんでいるが、三国岳の北側山地の県境付近では、スギ林
に混って、ブナ−ミズナラ林が分布しており、山地も、ブナ−ミズナラ林が、そ
の下方はクリ−ミズナラ林を主とする落葉広葉樹林が分布していて、スギ林の植
林が比較的高いところまですすんでいるとは云え、比較的自然度の高い林相景観
の山である。
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(この地区の情報は BEATLES さんに入力を協力していただきました)