67(三遠山地)黒崎半島地区−−−−−5万分の1地形図【西津】−−−−−−

〔概 要〕〔地形・地質〕〔植 物〕〔鳥 獣〕〔爬虫類等〕〔陸水生物〕〔景 観〕

67 黒崎半島地区                                 [⇒位置図]

〔概 要〕
 黒崎半島と鳥辺島を主要素とする小湾内環境で、三遠三角地の沿岸域に当り、
海岸地形は比較的変化に富んでいる。地質的には、チャートを伴うことが多い中
・古生層が発達している。気候は温暖で、鳥辺島にはスダジイ林が優占し、
スダジイ、ヤブツバキ、モチノキ、ベニシダ、テイカカズラ、イタビカズラなど
、ヤブコウジ−スダジイ群集の典型的な林相が残存している。この地区の一部、
食見海岸に、ハマウドが顕著なことも注目される。
 鳥類は、ホオジロが優占し、一般的な森林鳥を見るが、ワシタカ類も4種を認
め、アカバトの繁殖があり生息環境は優れている。
 爬虫類はアカジムグリが確認されており特記すべきことである。
 変化に富んだ内外海湾内の大小の砂浜の背景には、必ずといってよく老松林が
あり、静寂で素朴な漁村景観がある。世久見湾内には、鳥辺島周辺のほか2ヶ所
が三方海中公園地区に指定されている。


〔地形・地質〕
 三遠三角地内で、小浜市田烏付近から北西方向へ突出した海抜200〜300mの半
島である。
 地質的には常神半島のそれと類似しており、田烏〜阿納海岸部は粘板岩、
チャート互層からなる。矢代南方の小レンズ状石灰岩体からNeoschwagerina(中
期二畳紀)の産出が報告されている。また、矢代海岸では緑色岩が発達し、その
下位に珍しい石灰岩礫岩がみられる。
 比較的に地形・地質が変化に富んだ海岸といえよう。


〔植 物〕
 黒崎半島と鳥辺島によって構成される小湾内環境で、かなり明確な孤立的な自
然環境になっている。
 この地区も、全体的にスダジイ林及びタブノキ林が残存する照葉樹林帯が分布
の中心になっている。
 特に鳥辺島では、スダジイを主要林冠木としてタブノキが混淆し、林間には
モチノキ、ヤブツバキ、トベラ、アオキ、林床にはベニシダ、ホソバカナワラビ
、テイカカズラ、イタビカズラ、ジャノヒゲなどが優占している。組成としては
、全体的にはヤブコウジ−スダジイ群集のモチノキ亜群集の典型林叢である。
 食見付近においても、一部代償林化しているが、かなり広範囲にわたって
スダジイ林のモチノキ亜群集組成を主とする照葉樹林が分布している。
 また食見付近の海浜には、かなり多様のハマウドが分布していることも注目さ
れる。スイセンの自生も一部見られる。
 食見付近では、その温暖な自然環境を利用して、柑橘類の栽培が行われている
ことについても今後、更に開発的に検討すべきであろう。
 黒崎半島の先端部には、スダジイの萌芽林が広く分布しているが、それらの組
成はやや多様であり、調査困難な条件からも、今のところ明確ではない。


〔鳥 獣〕
 海岸地帯では冬鳥の渡りを見ることが多く、ヒヨドリ、カシラダカ、シロハラ
、ツグミの記録が多い。ホオジロ優占の環境でセグロセキレイ、村落型のモズも
多い。森林鳥では、メジロ、エナガ、ヤマガラ、カワラヒワ、イカル等が
ホオジロに次いでいて、ハヤブサ、ハチクマ、ノスリ、チョウゲンボウの
ワシタカ科の生息等51種を認め、内30種が森林鳥で、シジュウカラ、アオバトの
繁殖も確認し、二次林ではあるが鳥獣の生息環境としては好い方である。
 ニホンザル計130頭をみる。


〔爬虫類等〕
 爬虫類ヘビ科のアカジムグリが確認されたのは、1952小浜市田烏である。これ
以後に県内で確認されたことは一例もない。他県においても発見例はないという
。
 アカジムグリは、ジムグリの色彩変異であると主張する研究者と、独立種であ
ると称する学者もある現状だが、ここでは一応独立種あつかいで記載する。


〔陸水生物〕
 (藻類)
 この半島も小さな小川、コンクリートの水路以外河川らしきものは見あたらな
い。食見のコンクリート水路、釣姫の小川、田烏のコンクリート水路の3地点の
調査結果は次のとおりである。3地点合わせて藍藻2、珪藻52、緑藻7、計61種
を確認した。いずれも普通種であるが比較的多く、3地点共通に見られたものと
してはコッコネイス属、フナガタケイソウ属があげられる。
 (水生昆虫類)
 田烏の小河川は、谷にえん堤が築かれ流量が安定している。このため小規模河
川としてはめずらしく、ヒゲナガカワトビケラの生息が認められ、その他の種類
も合わせて19種類の生息が認められた。現存量は多くならない。
 (魚類)
 小河川で、アユ、ウキゴリ、ヨシノボリが少数生息していた。


〔景 観〕
 この地区は、起伏と屈曲の多い典型的なリアス式の海岸で、複雑な地形をもつ
半島や湾によってつくり出された自然景観が誠に美しい地区である。
 鳥辺島は、海水の美しい世久見湾の無人島で、湾内の景観に変化と詩情を添え
獅子ヶ崎や黒崎をもつ黒崎半島の外海側は、海蝕崖が発達し岩礁も散在する男性
的な海岸線をつくっている。この半島の山地は、暖地性の常緑広葉樹林が自生し
ていて、スダジイ林の極相林も分布しているなど、海陸共に自然度の高い風景が
みられる。
 田烏湾も変化に富む海岸線によって出来ている湾である。この湾に臨む田烏、
矢代、志積等の漁村の生活風景は自然とよく融合しているものであり、素朴で離
島的な漁村景観がみられる。
 田烏集落背後の山からは、変化に富む若狭湾の美しさをよく見ることが出来る
。小倉百人一首の二条院讃岐の歌で有名な沖ノ石の歌は、この山より詠んだと伝
えられているが、この美しい自然の景観は、また文学と深いかかわりのある景観
としても貴重である。
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(この地区の情報は BEATLES さんに入力を協力していただきました)