60(野坂山地)奥麻生地区−−−−5万分の1地形図【敦賀】−−−−−−−−

〔概 要〕〔地形・地質〕〔植 物〕〔鳥 獣〕〔景 観〕

 60 奥麻生地区                                      [⇒位置図]

〔概 要〕
 この地区の地質は、東部に分布する中・古生層とその中に貫入した花崗岩から
構成されている。県境付近には、高位段丘層がみとめられ、中期更新世頃にこの
付近が琵琶湖と日本海の連絡部であったことを示している。
 植相では、県境脊梁から斜面沿いに、オオバクロモジ−ブナ群集原生林及び安
定した組成を示すブナ−ミズナラ林が、広い範囲にわたって分布している。
コバンノキ及びヒヨクソウなどの稀産種も見られ、またユキツバキが高頻度に分
布するなど、植物区系地理学的に貴重な種類が多い。
 鳥類の生息環境としては、カラ類、ヒヨドリ、ホオジロの林相であり、深く入
り込んだ渓谷は、カワガラス、ヤマセミに適している。


〔地形・地質〕
 県境には、行市山、三方ヶ岳など、海抜600m内外の山稜が連なっており、行
市山付近から北東へ奥麻生川が流下して、笙ノ川に合流する。
 この地区の地質は、中・古生層とその中に貫入した中生代末〜第三紀初期の花
崗岩(新期花崗岩)から構成され、中・古生層は花崗岩体との接触部で巾広く変
成されている。中・古生層は頁岩相が卓越し、チャート、緑色岩なども伴われる
。東部では北東の、また西部では北西の走向を示すことが多い。
 国道8号線の県境付近には、一部に泥炭層を介在する砂礫が分布しており、海
抜200〜250mの開析された地形面を構成するらしい。"高位段丘"とされたもので
、かつて奥琵琶湖側と日本海側が連結していた当時、この新道野付近も水浸しに
なったものと考えられる。その時代は更新世中期と推定できる。


〔植 物〕
 北国街道を境にして、滋賀県に隣接し、そこから西側及び南側の地区である。
本県における豪雪地域の一部であり、特に、地区の南端の新道付近には、例年著
しい大雪が見られる。
 この地区一帯は、県境付近のブナ原生林を除き、山地全域が、均質な組成を示
すクリ−ミズナラ林によって占められている。夏緑広葉樹林の二次林帯であるが
、好適な自然環境が構成されている。林相の中では、コバンノキ及びヒヨクソウ
の稀産種が報告されており、特に新道野付近を中心に、広い範囲にわたって、太
平洋沿岸要素のシロモジが、樹高5〜6mの比較的低樹高林冠であるが、特別な
相観を呈している。また、全域にわたって、日本海地域要素が多種類分布してお
り、中でも、ユキツバキが高密度に分布して、ミズナラ林の林間に優占する。敦
賀市付近では、比較的低地にユキツバキが高密度に分布する地区として注目され
る。
 また、杉箸の気比神社の社叢に、シラキが非常に高密度に分布していることも
、本県では非常に貴重である。
 林相としては、オバクロモジ−ブナ群集の標徴種が優占するブナ林に組成が共
通する。


〔鳥 獣〕
 一帯が二次林で、カラ類、ヒヨドリ、ホオジロの林相である。渓谷は深く入っ
ており、カワガラス、ヤマセミの生息に適している環境である。


〔景 観〕
 福井、滋賀の県境の行市山(659.7m)、三方ヶ岳の北斜面を中心とする山地
で、笙ノ川上流の奥麻生川の谷をはじめ、谷地形はスギの植林がすすんでいるが
、山地の大部分はクリ−ミズナラ林、クリ−コナラ林を主とする夏緑広葉樹林で
、所々にスギ林、アカマツ林の分布も目だつ。山頂付近にはブナ−ミズナラ林も
分布しており、スギの植林がすすめられつつある山地であるが、林相景観はまだ
自然の姿を比較的よくとどめていると云える。
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(この地区の情報は BEATLES さんに入力を協力していただきました)