56(敦賀平野)松原、金ヶ崎地区−−−−5万分の1地形図【敦賀】−−−−−

〔概 要〕〔地形・地質〕〔植 物〕〔鳥 獣〕〔昆 虫〕〔爬虫類等〕〔陸水生物〕〔景 観〕

56 松原、金ヶ崎地区                               [⇒位置図]

〔概 要〕
 この地区は、敦賀湾の湾奥にあり、花崗岩質の粗粒砂からなる海浜が狭長に
発達している。その背後には2〜3列の低い浜堤列がみとめられる。
 金ヶ崎、天筒山の植相はイノデ−タブ群集及びヤブコウジ−スダジイ群集が
優占する照葉樹林帯が極めて安定した林相を呈する。クリ−コナラ林の及び
アカマツ林の二次林相も安定している。
 松原公園内ではカラ類、松原小学校における例年のササゴイ繁殖、天筒山で
もカラ類、アオゲラの生息があり、笙ノ川水面ではユリカモメ、
アカエリヒレアシシギを見られる等よい環境である。また松林は良く保全され
ているので昆虫類も多い。
 爬虫類等の生息相は一般的であるが、山林に囲まれた樫曲では、放置された
休耕田が湿地化し、両生、爬虫類に適合した生息地となり、両類ともに多種が
確認された。
 陸水生物の生息環境としては、笙ノ川下流域に当る所で、水質がやや悪化し
ており、藻類、水生昆虫類、魚類ともに特記すべきものはみられない。
 敦賀市街地の西端に位置する気比の松原は、敦賀湾の南岸約1kmにわたる白
砂青松の景勝地で国の名勝に指定されている。


〔地形・地質〕
 敦賀平野の北半部は三角州性低地で、特に黒河川以西には湿地性堆積物が広
く分布している。その北側の海岸部には、海岸線に沿って2〜3列の低い浜堤
列があり、その標高は4〜5mである。主として花崗岩質の粗粒砂からなり、
その層厚は数mで、下位には内湾成浅海の泥層が広がっている。この泥層は縄
文前期までに堆積したもので、浜堤列は縄文中期以降の海退期に形成されたも
ので、砂層中からは弥生時代の土器が産出している。
 また、東部の金崎付近は中・古生層の山地西端にあたり、近くの敦賀セメン
ト採石場の石灰岩体中からは、古生代後期の紡錘虫化石を多産する。


〔植 物〕
 天筒山(169.9m)の一部を含み、金ヶ崎城跡(86.0m)、松原海岸及び市街
地からなる敦賀平野の中心部である。その西よりの部分に、南北に笙ノ川が流
れ、敦賀湾に注ぐ。
 天筒山及び金ヶ崎城跡の斜面沿いに、イノダ−タブ群集及びヤブコウジ−
スダジイ群集が優占する典型的な照葉樹林帯が分布している。本県における暖
地性常緑広葉樹林による安定した自然環境が構成されている。
 それらの林間には、スダジイ、タブノキ、ヤブニッケイ、モチノキ、サカキ
、アセビ、シャシャンボ、アカガシ、イタビカズラ、ビワ、ハゼノキなどの暖
地性要素が優占し、その他、マルバマンサク、サイゴクミツバツツジや
キンキマメザクラ等の日本海固有種もかなり顕著である。
 気比の松原は、現在、ほとんど全域にわたって、アカマツ林によって占めら
れて、クロマツ林はごく一部にのみ分布している。
 それらアカマツ林の林間には、スダジイ、コナラ、ソヨゴ、ナツハゼ、
ハゼノキ、ネジキ、アセビ、アキグミ、ヒサカキ、アカガシ、シラカシ及び
ウスノキなどが優占し、林床には、ヤブコウジ、アキノキリンソウ、ヤブラン
やツタウルシなどが顕著である。


〔鳥 獣〕
 松原公園は単純林であるが、下生えもありシジュウカラ、ヤマガラなど森林
性の鳥も見られる。松原小学校のイチョウの木には毎年ササゴイが10〜15巣を
営んで繁殖し、よい観察対象となっている。笙ノ川では冬の水鳥カモメ、
セグロカモメ、オオセグロカモメ、ユリカモメの越冬、アカエリヒレアシシギ
、コハクチョウの休息滞在もある。アカエリヒレアシシギは松原公園沖でも
200〜300羽の群れを見る。
 金ヶ崎、天筒山の照葉樹及び夏緑広葉樹の林内には、カラ類をはじめ
ヒヨドリ、アオゲラや冬の森林鳥も見られ、春秋の候の松原公園の23種に比し
、34種とこの地域は鳥類にとって良好な生息環境を呈している。


〔昆 虫〕
 松原には南方系大型種であるキンモウアナバチが生息し、ハナダカバチ、
ヤマトハナダカバチモドキ、ツチスガリ類、ベッコウバチ類など各種の地中造
巣性の蜂類が豊富である。また、アリ類の種構成も変化に富む。松樹に特異的
に生息するクリサキテントウが比較的多く、松林はその林床の植生とともに自
然がかなり良く保全されているので、市街地に隣接した地域としては昆虫類も
多い。


〔爬虫類等〕
 両生類について見ると、1939年飯田良雄が気比神宮において
クロサンショウウオを確認したという記録がある。これが事実だとすると、県
内では奥越の高山地域にのみ生息するとされていることとは大きな違いである
。(新潟県等では平坦地にも生息するという記録が多い。)カエルでは
トノサマガエル、ツチガエル、モリアオガエル、アマガエル等である。爬虫類
ではシマヘビ、アオダイショウ、ヤマカガシ等と一般的。その他トカゲ、
カナヘビを目撃した。
 貝類では、物資交流の盛んな土地のためか、移入された、コウラナメクジ、
オクチョウジガイが多く、金崎城址には無帯のヤマタカマイマイが多い。
ゴマオカタニシ の新分布地でもある。


〔陸水生物〕
 (藻 類)
 この地区の水域は木ノ芽川、五位川、黒河川などを主な支流とする笙ノ川水
系の下流部である。水はきれいで、瀬では清水性の藍藻である
ホモエオスリックス属が多くみられた。
 この地区の水系2ヶ所(木ノ芽川との合流点、黒河川との合流点)の調査で
は藍藻7、珪藻64、緑藻5、計76種が確認できた。いずれも普通種であるが、
ホモエオスリックス属が優占していて、これに次いでカワシオグサ、
カマエシフオン属、ユレモ属、ハリケイソウ属、コッコネイス属、
アクナンティス属、フナガタケイソウ属、クチビルケイソウ属が目立った。
 (水生昆虫類)
 木ノ芽川、黒河川及びこれらを合わせる笙ノ川が主要河川。河川形態はおお
むねBb型であるが、笙ノ川の河口付近ではBc型となる。平野部、市街地を
流れるため、農業排水、都市下水が流入し、水質は順次悪化し、河口付近では
黒色のシルトが礫に付着している。水生昆虫は、中流域ないしは下流域の生息
状況を示す。全体的に、種類数・現存量ともに少なく、河口付近では、瀬があ
ってもほとんど見られなくなる。
 (魚 類)
 笙ノ川の下流にあたり、フナ、ウグイ、オイカワ、アユ、ヨシノボリが比較
的多く、カワムツ、マハゼなどもいくらか生息していた。


〔景 観〕
 砂浜に松林が長くつづく松原の海岸は、アカマツ林にクロマツ林の混在する
松林で、老樹が多く、それが白い砂浜と紺の海に互に映えて、頗る風致に富む
海岸をつくり出している。この美しい自然の景観を保護するために、この海岸
は、文化財保護法により名勝に指定されている。
 金ヶ崎は、敦賀湾頭につき出た小高い小さな岬で、その大部分の地が金ヶ崎
宮の社叢であるために、スダジイ林、アカマツ林などが、市街地に隣接してい
るにもかかわらず自然に近い状態に保たれており、地形も変化に富んで、景勝
の地となっている。
 天筒山の東側には、今は水田に利用されているが、余座など南北に並ぶ三ヶ
の小さい盆地状の谷が見られる。珍しい谷地形の景観である。
 金ケ崎の山頂にある金ヶ崎城址は、延元の昔、南朝方の恒良、尊良両親王の
非運の歴史をとどめる史跡であり、また天筒山は戦国の頃、朝倉宗滴の據った
天筒山城址のある山で、この点、金ヶ崎、天筒山は、歴史上の史実を秘める自
然景観としても貴重である。
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(この地区の情報は BEATLES さんに入力を協力していただきました)