43(南条山地)甲楽城海岸、その他周辺地区−−-5万分の1地形図【鯖江】−-

〔概 要〕〔地形・地質〕〔植 物〕〔鳥 獣〕〔爬虫類等〕〔景 観〕

43 甲楽城海岸、その周辺地区                       [⇒位置図]

〔概 要〕
 南条山地の北西部が、急斜面をもって日本海岸に接するこの付近の海岸線は
、直線状にのびている。一部、甲楽城集落付近には、中位の海岸段丘がみとめ
られる。中新世前期の糸生累層が厚く発達しており、その構造は海岸線の方向
と必ずしも一致しないが、沖合を甲楽城断層が北西方向に通るものと推定され
る。
 植物は、ミズナラ−マルバマンサク群落、ヤマツツジ−コナラ群落、
ヤマツツジ−アカマツ群落による代償林が、組成的に安定した代償林帯を構成
している。
 矢良巣岳、金華山にかけては、林道網の開設が進んで伐採地が多く、鳥類の
生息環境はよくない。しかし、シジュウカラ、ヒガラ、エナガなど森林鳥の個
体数は多く、冬・夏鳥の渡りも見られる。
 この地区の海岸線は、単調ながら急峻な山が海に迫り、典型的な断層海岸地
形景観を呈している。


〔地形・地質〕
 この地域は、海抜300〜400m内外の南条山地が急斜面をもって、直接日本海
にのぞむ。この海岸の一部、河野村甲楽城集落の背後には、海抜約40mの海成
中位段丘がみとめられる。この地区一帯に、直線状の海岸線が続く。背後の山
頂部には所々 wind gap が存在する。甲楽城−米ノ浦間には急斜面の山腹がよ
く連続し、海岸に沿う断層の存在が推定される。
 地質的には、中新世前期の糸生累層が広く分布しており、安山岩質溶岩およ
び同質火砕岩類から構成される。その基盤である古生層、足羽層などは、北部
の天王川最上流付近に僅かに分布するに過ぎない。また、糸生累層の構造は、
海岸線の方向とは必ずしも調和的ではないが、沖合の海底地形の急変部の存在
などからみて、北西方向にのびる甲楽城断層を予想できる。


〔植 物〕
 糠から甲楽城を通る海岸から、急峻断崖地形を経て、矢良巣岳(472.7m)、
金華山(399.8m)、若須岳(564.4m)及び午房平を含む山地で、基礎自然度
の高い非常にすぐれた自然景観が構成されている。
 この地区の特徴は、広範囲にわたって、組成的に安定した林相を呈するクリ
−ミズナラ林帯が分布することが挙げられる。
 それらの林間では、マルバマンサク、ホツツジ、イタヤカエデ、
ザイフリボク、ナツハゼ、イヌガヤなど林床では、カンスゲ、チゴユリ及び
シシガシラなどが優占して、ミズナラ−マルバマンサク群落にまとめられる。
臨海地で、しかも低山地ながら、多雪型のブナ林漂徴種が顕著であることは、
本県における代償林の組成を分析するうえで極めて貴重である。
 それらの下部には、ヤマツツジ−コナラ群集及びヤマツツジ−アカマツ群集
にまとめられるヤブツバキクラス域代償林が形成されている。
 海岸に近接する山麓斜面の標高約100m付近までには、萌芽林状であるが、
ヤブコウジ−スダジイ群集モチノキ亜群集の典型林帯が一様に分布して、かな
り顕著な照葉樹林帯が見られる。
 それらの林帯の中、特にスダジイ林床を中心に、河野海岸に到る範囲にわた
って、マメツダの分布が顕著であり、スイセンが介在して特徴のある植生帯が
構成されている。
 近年、海岸道路の拡張などによって、山麓斜面における照葉樹林帯における
伐採がやや著しく進行して、伐採が顕著になっているので、今後は少なくとも
山麓地の照葉樹林の保全に対して充分研究、検討を進めるべきであろう。


〔鳥 獣〕
 矢良巣岳、金華山にかけては林道網の整備が進み、伐採地が多い。スギ林、
アカマツ林、一部河野村今泉から武生市中山峠にぬける旧道では、利用形跡は
見られなかったが、トヤ場跡のはっきりと残る夏緑広葉樹林が残り、貴重な林
相を呈している。
 シジュウカラ、ヒガラ、エナガなど森林鳥の個体数が多く、ヒヨドリ、
ヤマガラ、アカゲラ、ホオジロ、ノスリ、コゲラ、メジロ、キジバト、
ウグイス等の留鳥、冬・夏鳥の渡りも見られるが、全域の生息環境はよくない
。


〔爬虫類等〕
 両生類、爬虫類では一般種が多い中で、甲楽城でタカチホヘビの確認だけが
特記される。
 貝類では、イツマデガイ、オトメマイマイが多い。オカノニシキマイマイの
棲息地南限である事が特筆される。また、ニクイロシブキツブの特産地である
。


〔景 観〕
 午房ヶ平、神土、糠、甲楽城の海岸は、山が海に迫り急峻で、且つ海岸線が
直截的に一直線をなす典型的な断層海岸の地形を示す景観の海岸である。
 この海岸は、臨海の斜面一帯にヤブコウジ、スダジイの群落があり、一部に
シイ林もみられる典型的な暖地性の照葉樹林が分布しているところで、林相景
観は越前の他の山地においてみられるものとは、かなり異っている。
 山地の内陸にはいると、矢良巣岳の山頂付近ではクリ、ミズナラ林が、その
下方は一帯にクリ、コナラ林で、尾根等にはアカマツ林も混る。所々の谷地形
では、スギもみられるなど、低山性の山に共通する景観である。
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