31(福井平野)九頭竜川下流地区−−-5万分の1地形図【福井】【永平寺】−-

〔概 要〕〔地形・地質〕〔植 物〕〔鳥 獣〕〔昆 虫〕〔陸水生物〕〔景 観〕

31 九頭竜川下流地区                        [⇒位置図]

〔概 要〕
 この地区は、福井平野を流れる九頭竜川によって形成された氾濫原(平野)
で、河岸沿いに自然堤防が見られる。
 植生では、九頭竜川下流部の河原の半安定地におけるオオオナモミ群落及び
オオイヌタデ群落のすみわけは、生態地理学的に非常に貴重である。また、帰
化植物の種類が非常に多く分布していることも注目される。
 この九頭竜川下流部は、冬期のマガモ、コガモ、カワアイサなどの休息地と
なっており、数は、2,000〜3,000羽におよぶ。また、キジ、ムクドリ、オナガ
、キジバトなどの繁殖地ともなっており、越前平野中央部、福井市近郊の野鳥
生息地として貴重である。
 昆虫類では舟橋付近で、県下ではその生息地が局限されている
セアカオサムシとヤコンオサムシの生息が認められている。


〔地形・地質〕
 福井市森田から日野川との合流点付近までは河床は礫質であり、九頭竜川の
自然堤防帯に属する。特に右岸側に沿って自然堤防が発達する。この付近には
高水敷が所々分布することが多い。


〔植 物〕
 九頭竜川の中流域からこの地区下流域にかけては、半安定帯と安定帯とがか
なり規則的な植生帯を構成して、河床生態系の特徴を示す。
 この地区では、ツルヨシ−ミゾソバ群落及び湿地性のイネ科及び
カヤツリグサ科の一年生植物の群落が、水辺植生を特徴づけているが、特に、
半安定帯の外縁部における粘土性区域には、オオオナモミ群落及び
オオイヌタデ群落が顕著にすみわけて、九頭竜川河床植生帯の特徴のひとつと
なっている。
 安定帯では、ススキ−メドハギ群落、メドハギ−カワラヨモギ群落、
オオマツヨイグサ−ヨモギ群落、オトコヨモギーヤハズソウ群落、
オオアレチノギク−エノコログサ群落及びヨシ−カナムグラ群落等が顕著であ
り、多様な植生帯が構成される。
 近年、河床植生帯の水辺への侵入が急速に著しくなっており、更に富栄養化
が進むと考えられるので、早急に、河床の改修を通して、流路の復元が検討さ
れるべきである。
 この地区の大部分は、水田地帯と市街地になっており、基礎自然度は著しく
低い値を示しているが、集落にある神社社叢では、ヤブツバキクラス域の潜在
環境を標徴するイノデ−タブノキ群集及びヤブコウジ−スダジイ群集の標徴種
や群落型が残存されている。


〔鳥 獣〕
 九頭竜川河川敷は、冬期のマガモ、コガモ、オナガガモ、ヒドリガモ、
キンクロハジロ、カワアイサ、カルガモの休息地となっている。カワアイサは
他に例は少ない種である。数は2,000〜3,000羽におよぶ。カイツブリ、タゲリ
の他、カモメ、セグロカモメも海岸より入りこんできている。
 キジ、ムクドリ、セグロセキレイ、最近生息範囲を広めているオナガ、
キジバト、コサギの繁殖もあり、越前平野中央部、福井市近郊の野鳥生息地と
して貴重である。


〔昆 虫〕
 舟橋付近で、セアカオサムシとヤコンオサムシの生息が認められる。両種と
も大型甲虫であるが、県下ではその生息地が局限されている。この地区は水辺
植生がよく発達しているので、調査が進めば、河岸特有の昆虫の生態系が見出
される可能性がある。


〔陸水生物〕
 新田から高屋付近へ流れる水域で、九頭竜川下流域の上部にあたる。沿海魚
がこの付近まで侵入し、また水生及び湿生植物の顕著な群落帯が形成されてい
る。
 (魚類)
 コイ、フナ、ナマズなど18種が生息し、コイ域の魚類相を示す。スズキ、
ボラなどの沿海魚はこの付近まで侵入するのが観察された。往時、森田付近は
サケ、サクラマス、カマキリの好漁場であったが、現在わずかに漁獲される程
度である。


〔景 観〕
 長大な堤防を両岸につらねる九頭竜川の流れは、ゆるやかで、恰も水郷の如
き感じをもつ平和な眺めである。森田、舟橋、高木、舟橋新地区は都市化がす
すみ、次第に堤外地の景観も自然な河原の感じが失われつつある。
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