3(奥越火山地)美濃又谷周辺地区−5万分の1地形図【越前勝山】【荒島岳】

〔概 要〕〔地形・地質〕〔植 物〕〔鳥 獣〕〔昆 虫〕〔爬虫類等〕〔景 観〕

3 美濃又谷周辺地区                          [⇒位置図]

〔概 要〕
 美濃又川上流一帯の壮年期山地は、面谷流紋岩類とそれを被う鮮新−洪積世
の安山岩類から構成されている。この脊稜山地の中心は薙刀山(1,637.2m)で、
一部に池ヶ原湿原が位置する。チシマザサ風衝草原が稜線上部に、その下部に
、キタゴヨウやホンシャクナゲ林叢が散在するオオバクロモジ−ブナ群集が分
布している。ブナ−ミズナラ林の林床に、オウレンの栽培が広い範囲に進めら
れている。


〔地形・地質〕
 岐阜県との県境には、南北方向に海抜 1,600m級の稜線が延びている。上打
波付近で打波川に合流する美濃又川上流一帯は壮年期山地である。
 下位に面谷流紋岩類があり、山脈上部には鮮新−洪積世の輝石安山岩類が広
く分布する。美濃又谷の源流部橋立峠の西南側には、古くから、この安山岩類
の大崩壊地があったが、最近その防止工事が完成して、様相が一変した。


〔植 物〕
 岐阜県との県境の一部、薙刀山を主とする脊稜山地及びその西、南側斜面の
地区で、一部に池ヶ原湿原を含む地区である。
 稜線沿いには、チシマザサ風衝草原が分布し、その下部には、キタゴヨウ及
びホンシャクナゲなどを含むが、全体的には典型的な日本海型ブナ林の
オオバクロモジーブナ群集の安定した林帯がひろがり、更にその下部にブナ−
ミズナラ林が続いて、ブナ林への遷移型を呈する。
 三又谷を含む野伏岳の脊稜山地の風衝草原及びブナ林には、チシマザサ、
オオコメツツジ、ウラジロハナヒリノキ、マルバマンサク、クロソヨゴ、
ゴゼンタチバナ、ヒメモチ、ツルシキミや エゾユズリハなど、多雪地帯の夏緑
広葉樹林帯の自然環境の顕著な特色が保たれている地区である。
 池ヶ原湿原は、水位がかなり下がっており、周辺の ブナ林、ブナ−ミズナラ
林の伐採が著しく、やや不安定になっている。


〔鳥 獣〕
 薙刀山、野伏岳にはよく繁った夏緑広葉樹林が見られ、野生鳥獣の生息には
よい環境と思われる。


〔昆 虫〕
 この地区の昆虫相は十分調査されていないが、かつては、現在はなくなって
いる出作り小屋や材木に、珍種のアナバチ類が多く生息していた。深山性の
アリが多く、特に エゾアカヤマアリの生息は本種の分布南限であり、
ケブカクロオオアリも多い。林道開発や伐採が進んでいるが、精査すれば、相
当数の注目すべき種の生息が確認されるものと思われる。


〔爬虫類等〕
 美濃又三又谷の渓流には、ナガレヒキガエル、カジカガエルが多く、山麓地
帯では モリアオガエルの生息が多い。シマヘビ、ヤマカガシ、マムシが多産
である。
 貝類は種類数はかなり多いが、個体数の数の少ない地区である。


〔景 観〕
 県境の脊稜山地は、薙刀山、野伏岳など何れも海抜 1,600mを超える亜高山
性の山が連なっていて、ブナの原生林が生い茂り、原生自然に覆われた自然度
の高い地域である。
 上打波より橋立峠を越えて、石徹白の上在所に通じていた道があった美濃又
谷以外は、殆ど山地に入ることは困難であり、この橋立峠も今は中腹より上は、
崩壊ヶ所が多く入ることが困難である。薙刀山、野伏岳等の山々の本県側は急
峻で高く、山容は深山の趣が深い。
 三面谷の奥地も美濃又谷の奥地同様、1,600mを超す亜高山性の山で、ブナの
原生林が生い茂り、稀ではあるが シラカバ、トチもみられる珍しい林相景観の
地であるが、全山原生自然に覆われていて、ここも入ることは容易でない。
 原生自然に覆われた亜高山性の山々が連なるこの地区の山岳景観は、深山の
趣が深く自然度の高い景観として貴重である。
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