25(越前中央山地)吉野ヶ岳周辺地区−−-5万分の1地形図【永平寺】−−−-

〔概 要〕〔地形・地質〕〔植 物〕〔鳥 獣〕〔景 観〕

 25 吉野ヶ岳周辺地区                   [⇒位置図]

〔概 要〕
 この地区の山地は、壮年期的様相を呈しており、この付近一帯は中新世前期
の糸生累層から構成されている。
 植生では、低山地、平野部に近い地区での代償林として、クリ−コナラ林及
びアカマツ林が組成的に安定した林相を呈していることは、生態地理学的に貴
重である。特に、植相が非常に豊富であることは注目に値する。


〔地形・地質〕
 この地区は越前中央山地の北部にあり、海抜500m程度の壮年期的な山容を
もっている。その西側には吉野谷付近の丘陵性山地が接する。すべて中新世前
期の糸生累層が分布し、安山岩質溶岩および同質凝灰角礫岩から構成される。


〔植 物〕
 永平寺川の西側に位置し、吉野ヶ岳(547.0m)の西南側に広がる低山地で
ある。この付近一帯は、元来顕著な低山地多雪域であって、スギ植林帯が山麓
部を中心に層あつく広がっている地区である。
 全域が二次林によっておおわれるが、代表的な林相としては、山麓から山頂
に向かってクリ−コナラ林、アカマツ林及びクリ−ミズナラ林が見られ、それ
らが、それぞれ均質で安定した代償林垂直分布帯を構成して、かなり自然的更
新が進行されている。
 アカマツ林及びクリ−コナラ林の組成は、この付近一帯の各林相に近似して
いるが、クリ−ミズナラ林では、林間にマルバマンサクが優占して、多雪地夏
緑林に特徴として、サイゴクミツバツツジ、ハイイヌガヤ、オオバクロモジ、
キンキマメザクラ、タムシバなど日本海地域固有種が多種類分布する特有な林
相を構成している。特に、この付近の安定したクリ−ミズナラ林の林分は、本
県における二次林として生態地理学的に貴重である。
 この地区の自然環境として、クリ−コナラ林から上部山頂までの二次林を保
全すべきであろう。


〔鳥 獣〕
 スギ植林帯が広範囲に分布する生息環境であり、鳥類の生息種は一般的であ
る。


〔景 観〕
 吉野ヶ岳は蔵王山とも云われ、古代中世における山岳信仰上の霊山として知
られた山である。スギ林、クリ、コナラ林、ミズナラ林を主に、アカマツ林ら
も混在し、山頂付近では自然林に近い林相も見られる一般的な里山景観を呈し
ているが、眺望性にすぐれ、山頂からは、信仰の山らしく、越前五山を一望に
おさめることが出来る。
 古代、中世において山岳信仰上の霊山とされたこの山は、白山信仰とかかわ
りをもつ修験者の登拝と、大峰信仰とかかわりをもつ修験者の登拝と二つの山
岳信仰が習合している山であった。白山信仰では猪谷より板室(室堂)に登拝
し、大峰信仰では院内(上吉野)より山頂の蔵王堂に登拝したもので、今もそ
れぞれの登拝道に当時の遺跡が遺存している。その点この山の景観は、山岳信
仰上の歴史的自然景観としても貴重である。
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