16(加越丘陵)笹岡地区−−−−−5万分の1地形図【大聖寺】−−−−−−−

〔概 要〕〔地形・地質〕〔植 物〕〔鳥 獣〕〔昆 虫〕〔爬虫類等〕〔景 観〕

16 笹岡地区                          [⇒位置図]

〔概 要〕
 この地区は、加越山地の西側にある加越丘陵に属し、さらに西方には加越台
地が拡がっている。中新世中期の河南累層(国見累層相当)が分布する。
 この地区全域にわたって分布するアカマツ林では、林間に特にヤマウルシが
優占し、組成全体としても均質で安定している林相が構成されている。本県に
おける丘陵地アカマツ林の代表的な群落型のひとつとして貴重である。
 また、この地区にはトンボ類の豊富な溜池があり、特にハッチョウトンボと
エゾイトトンボの生息は貴重である。
 両生、爬虫、貝類の生息条件としては小規模ながらかなり整っている地区で
あるが、調査結果では以外に平凡であった。


〔地形・地質〕
 この地区は加越山地の西方に拡がる海抜 200m内外の加越丘陵に属する。凝
灰質砂岩・泥岩を狭んだ厚い凝灰岩の多い中新統中部の河南累層が分布してお
り、南方には福井平野、また西方には加越台地がある。


〔植 物〕
 金津町笹岡周辺の広大な加越丘陵地で、特に熊坂川沿いの丘陵地斜面に
アカマツ林が分布する。
 それらのアカマツ林は、全域にわたってアカマツの植林域であると考えられ
るが、近年まで人手があまり入らず、むしろ自然条件下で更新されている。
 林冠アカマツは、およそ30〜40年樹令の若令木であるが、100平方メートル
に樹幹数50株以上の多密林相を呈し、階層も比較的明確であり、針葉植林とし
ては高次な生産性を持つ好適な生態系が構成されている。
 林間には、まずヤマウルシが極めて顕著に優占し、低木層にミヤコザサが顕
著である。林間に見られるものとしては、リョウブ、ウリカエデ、ネジキ、
ソヨゴ、ヒサカキ、ホツツジ、コバノトネリコ、サイゴクミツバツツジ、
キンキマメザクラ、ツクバネウツギ、ナツハゼが低優占度ながら高頻度に分布
し、林床も分散的であるが、ヤブコウジ、アクシバ、サルトリイバラ、ワラビ
、ヤマツツジ、ツルアリドウシなどが分布する。全体的にアカマツ−
ヤマウルシの林相を呈するが、組成的にはヤマツツジ−アカマツ群集に入ると
考えられる。
 それらアカマツ林相は、本県の若狭湾、越前海岸国定公園のひとつの標徴で
ある海岸アカマツ林相に共通するものであるが、この地区、更に坂井郡一帯の
丘陵地に広く分布する林相もあわせ、亜高木層にヤマウルシが著しく優占する
ことによって特徴づけられ、本県における臨海丘陵地の植物環境を診断する要
素として極めて重要である。


〔鳥 獣〕
 平野部に連なる低山、植林および若令林で、山麓部にホオジロ、ヒヨドリ、
カラ類の生息を見るが一般的な環境である。


〔昆 虫〕
 昆虫全般については調査が行届いていないが、この地区にある溜池には
トンボ類が豊富で、トラフトンボ、ハッチョウトンボ、エゾイトトンボ、
ヨツボシトンボ、サラサヤンマ、ヤマサナエなど17種が記録されている。その
うちで、ハッチョウトンボは保護が望まれているもので、エゾイトトンボは分
布上貴重な記録である。上に種名をあげたほかの4種はいずれも県下では生息
地の少ない注目すべきものである。


〔爬虫類等〕
 平凡な生息相の両生、爬虫類は一般的で特別記載するものではないが、貝類
では石川県の代表種のノトマイマイが多く生息する。これは、同県からの進入
口にあたるからであろうと思われる。また、中腐水性のモノアラガイ、
ヒラマキミズマイマイ、ヒラマキガイモドキの生息は、本地区の水質の汚染度
を知る指標となるであろう。


〔景 観〕
 小高い丘陵に、老樹も混るアカマツの群落が優占してつくるその風致は、坂
井郡北部丘陵地特有の自然景観で、この地区は最もそれがよくみられる。
 隣接の滝、青ノ木等の地区は自然条件としては、この地区とほぼ同一の地で
あるが、スギの植林等が部分的にすすんでいて、この地区のように特有の景観
をとどめているところは少ない。
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