○ 窒素酸化物自動測定機の測定原理

 環境大気中の二酸化窒素濃度を自動的に連続測定する測定機としては、JIS B 7953 において、化学発光方式および吸光光度方式に基づくものがあり、環境基準および緊急時の措置に係る測定法としては、「二酸化窒素に係る環境基準について」(昭和53年環境庁告示第38号)および大気汚染防止法施行規則第18条において、ザルツマン試薬を用いる吸光光度法またはオゾンを用いる化学発光法を用いることになっています。
 なお、福井県においては、オゾンを用いる化学発光法により測定しています。

(オゾンを用いる化学発光法)
 試料大気にオゾンを反応させると、一酸化炭素から励起状態の二酸化窒素が生じ、これが基底状態に戻る時に光を発します (化学発光)。この化学発光の強度を測定することにより、試料大気中の一酸化窒素濃度を測定することができます。 一方、試料大気をコンバーターと呼ばれる変換器に通じて二酸化窒素を一酸化窒素に変換した上で化学発光の強度を測定すると、 試料大気中の窒素酸化物(一酸化窒素+二酸化窒素)の濃度が測定できます。またこれらの測定値の差を求めることによって 試料大気中の二酸化窒素濃度を測定することができます。

1
      NO + O3   →  NO2* + O2    (1)

2
          NO2*   →  NO2 + hν     (2)

3
     NO2* + M   →  NO2 + M*      (3)

 すなわち、一酸化窒素とオゾンが反応すると二酸化窒素(NO2)が生成しますが、その一部が一定の割合で励起状態のNO2* となります。このNO2*が基底状態に戻る時、式(2)で励起エネルギーを光エネルギーとして放出するのでこの強度を測定します。  この発光の強度は、およそ次式で表されます。

I = 2[NO2*]
1*2[NO][O3]
────────
2+k3[M]
[NO][O3]
────────
[M]

     I
    E
  [NO2*]
   [NO]
   [O3]
 k1、k2、k3
    [M]
 : 化学発光強度
 : NO−O3の化学発光効率
 : NO2*励起状態の濃度
 : NO濃度
 : O3濃度
 : 反応速度定数
 : 共存成分濃度(含空気)

 したがって、オゾン濃度を充分に過剰にすれば、発光強度Iは一酸化窒素濃度と比例します。  一酸化窒素とオゾンの反応の発光スペクトルは、600〜3,000nmの波長帯域にあり、極大波長は、1,200nm付近です。他の化学発光の影響を除くために、光電測光部に光学フィルタを使用します。光電測光部には、光電倍増管(PMT)や光電素子が使用されています。  また、式(3)に示すとおりに他の物質の化学発光と同様に、共存成分Mと励起分子が衝突して励起エネルギーを失うクエンチング(消光)を起こすこともあります。一般に、クエンチングを起こすガスとしては、二酸化炭素および水分が知られていますが、大気中の二酸化炭素濃度程度では測定への影響は無視できます。水分については、除湿器や調湿器を付加することによりその影響を除去します。窒素酸化物の中で、オゾンとの化学発光によって測定できる物質は一酸化窒素のみです。したがって、二酸化窒素はNO2*→NOコンバータによって窒素酸化物をすべて一酸化窒素として測定し、別途測定した一酸化窒素の量を差し引くことにより求めます。


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