○ 窒素酸化物自動測定機の測定原理

 環境大気中の窒素酸化物を自動的に連続測定する方法として、 「二酸化窒素に係る環境基準について」(昭和53年環境庁告示第38号)および大気汚染防止法施行規則第18条において、 ザルツマン試薬を用いる吸光光度法またはオゾンを用いる化学発光法を用いることとされています。
 なお、福井県においては、ザルツマン試薬を用いる吸光光度法およびオゾンを用いる化学発光法により大気汚染の常時監視を実施しています。

(ザルツマン試薬を吸収液とする吸光光度法)
 ザルツマン法は、N−1ナフチルエチレンジアミン二塩酸塩、スルファニル酸および酢酸の水溶液を吸収液としている。 二酸化窒素は、水に吸収されると亜硝酸および硝酸を生成しますが、 亜硝酸の生成率は、吸収液の組成、二酸化窒素濃度、吸収条件等に依存し、一般的には係数を含む次式で表わされます。

NO2 + H2O → α・HNO2 + (1−α)・HNO3    (1)

 式中のαはザルツマン係数と呼ばれ、二酸化窒素が吸収液(ザルツマン試薬)に吸収され、 反応して生成する亜硝酸イオンの量と初めの二酸化窒素との生成比率(NO2-/NO2)です。 我が国では、ザルツマン係数として0.84が使用されています。
 ここで生成する亜硝酸は、スルファニル酸とジアゾ反応し、ジアゾ化スルファニル酸塩として吸収されます。

 このジアゾニウム塩は、発色剤であるN−1ナフチルエチレンジアミン2塩酸塩とカップリング反応し、 アゾ染料を生成し、桃色に発色します。

 そこでこの発色の 545nmにおける吸光度を測定し、二酸化窒素濃度を求める方法です。
 一酸化窒素は、ザルツマン試薬とは反応しないので、硫酸酸性過マンガン酸カリウム液を満たした酸化器に通して 二酸化窒素に酸化した後に同様に測定します。 我が国では、一酸化窒素の二酸化窒素への酸化率として、70%が用いられています。

(オゾンを用いる化学発光法)
 試料大気にオゾンを反応させると、一酸化炭素から励起状態の二酸化窒素が生じ、これが基底状態に戻る時に光を発します (化学発光)。この化学発光の強度を測定することにより、試料大気中の一酸化窒素濃度を測定することができます。 一方、試料大気をコンバーターと呼ばれる変換器に通じて二酸化窒素を一酸化窒素に変換した上で化学発光の強度を測定すると、 試料大気中の窒素酸化物(一酸化窒素+二酸化窒素)の濃度が測定できます。またこれらの測定値の差を求めることによって 試料大気中の二酸化窒素濃度を測定することができます。

1
      NO + O3   →  NO2* + O2    (1)

2
          NO2*   →  NO2 + hν     (2)

3
     NO2* + M   →  NO2 + M*      (3)

 すなわち、一酸化窒素とオゾンが反応すると二酸化窒素(NO2)が生成しますが、その一部が一定の割合で励起状態のNO2* となります。このNO2*が基底状態に戻る時、式(2)で励起エネルギーを光エネルギーとして放出するのでこの強度を測定します。  この発光の強度は、およそ次式で表されます。

I = 2[NO2*]
1*2[NO][O3]
────────
2+k3[M]
[NO][O3]
────────
[M]

     I
    E
  [NO2*]
   [NO]
   [O3]
 k1、k2、k3
    [M]
 : 化学発光強度
 : NO−O3の化学発光効率
 : NO2*励起状態の濃度
 : NO濃度
 : O3濃度
 : 反応速度定数
 : 共存成分濃度(含空気)

 したがって、オゾン濃度を充分に過剰にすれば、発光強度Iは一酸化窒素濃度と比例します。  一酸化窒素とオゾンの反応の発光スペクトルは、600〜3,000nmの波長帯域にあり、極大波長は、1,200nm付近です。他の化学発光の影響を除くために、光電測光部に光学フィルタを使用します。光電測光部には、光電倍増管(PMT)や光電素子が使用されています。  また、式(3)に示すとおりに他の物質の化学発光と同様に、共存成分Mと励起分子が衝突して励起エネルギーを失うクエンチング(消光)を起こすこともあります。一般に、クエンチングを起こすガスとしては、二酸化炭素および水分が知られていますが、大気中の二酸化炭素濃度程度では測定への影響は無視できます。水分については、除湿器や調湿器を付加することによりその影響を除去します。窒素酸化物の中で、オゾンとの化学発光によって測定できる物質は一酸化窒素のみです。したがって、二酸化窒素はNO2*→NOコンバータによって窒素酸化物をすべて一酸化窒素として測定し、別途測定した一酸化窒素の量を差し引くことにより求めます。


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