○ 炭化水素自動測定機の測定原理

 大気中の非メタン炭化水素は、光化学オキシダント生成の原因物質の1つとして対策が推進されており、その一環として環境濃度の測定網の整備が進められています。
 「大気中鉛の健康影響について及び光化学オキシダントの生成防止のための大気中炭化水素濃度の指針について」(昭和51年8月17日中央公害対策審議会答申)に係る測定法として、非メタン炭化水素測定方式に基づく測定機を用いることになっています。また、「環境大気中の鉛・炭化水素の測定法について」(昭和52年3月29日環大企第61号)では、全炭化水素測定方式(差量法)について等価の測定方式と認めていますが、標準測定法としては非メタン炭化水素測定方式(直接法)となっています。
 JIS B 7956においては、環境大気中の炭化水素を自動的に連続測定する測定機として、非メタン炭化水素測定方式で差量法および直接法または全炭化水素測定方式に基づくものが規定されています。
 福井県では、水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ法による炭化水素自動測定機により測定しています。

(水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ法)
 水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ法は、炭化水素を水素炎中で燃焼するときに生じるイオンによる微少電流を測定する方法です。 この電流の強さは、炭化水素中の炭素数に比例するので、電流の強さを測定することにより炭化水素濃度を炭素数換算濃度として知ることができます。

 測定機は、試料大気を計量管で一定量に計量し、分離用カラムに導入します。 カラムでは、試料大気中の酸素、メタンおよび非メタン炭化水素成分がそれぞれ分離されて、カラムから最初に酸素とメタンが溶出します。 溶出するメタンを水素炎イオン化検出器で測定し、メタン濃度を求めます。 カラムから酸素とメタンが溶出した後、直ちにカラムのキャリヤガス流路をバックフラッシュ(逆洗)流路に切り換え、 カラムに残存する非メタン炭化水素を溶出させます。 溶出する非メタン炭化水素を水素炎イオン化検出器で測定し、非メタン炭化水素濃度を求めます。
 カラムによるメタン、非メタン炭化水素の分離は、メインカラム1本で行う方式(メインカラム方式)と プレカラム、メインカラムの2本で行う方式(プレカラム・メインカラム方式)とがあります。 これらのカラム構成は、水素炎イオン化検出器が酸素の影響を受けるため、 メタンと非メタン炭化水素を分離すると同時に酸素の分離をも考慮した方法になっています。
 燃料として使用する水素ガスは、水の電気分解により水素を得る水素発生装置、または高圧容器入りの高純度水素を用います。 いずれも水素炎イオン化検出器に供給される前に、炭化水素スクラバー等によって炭化水素濃度が0.05ppmC以下に抑えられたものを用います。
 キャリアガスは、日本工業規格(JIS)K1107(高純度窒素)に規定される2級(99.99% 以上)の純度で、 炭化水素含有量が0.1 ppmC以下の窒素を用います。
 助燃ガスは、自動測定機に付属している精製器で精製された空気を用います。



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